【誰もが学び続けられる「教育のまちに」】
80歳前の男性宅を訪問し、これまでの人生や現在の生活についてお聴きした。
これまで8,000冊以上を読んだこと。大学で中国語を学び、中国での仕事に携わり、今でも中国語で三国志演技や史記などを読んでいること。フランス語や英語の小説も原語で読んでいること。本を読む大切さについて、強調されていた。
現在、デイサービスに通っているが、本を語る仲間が欲しいとのこと。生涯学習の大切さを痛感した。
住み慣れた地域で介護や医療、生活支援サポートを受けられるような社会の仕組み(地域包括ケアシステム)を作ることが行政の大きな課題だが、福祉の分野だけでなく、図書館や公民館が支えられる部分も大きいのではないだろうか。そのためには、図書館分館や小学校図書館など、歩いて通える身近な場をネットワークしていくことが大切だと考えている。
子どもの学校教育だけでなく、すべての世代の人たちが、自分らしく生きるための学びを実現させたい。柏のまち全体を学びの場となるような仕組みを作っていきたい。
【「まちなか図書館」構想とコミュニティプロデューサー】
全国各地で本や情報を基盤とした場が注目されるようになっている。従来の図書館の枠を越え、人とのコミュニケーションが生まれる場としての役割を期待されている。
地域包括システムの文化版のような形で、それぞれの地域にまちなか図書館を設置し、地域情報を収集し、保存し、整理し、編集し、発信し、活用していくコミュニティプロデューサーのような司書を約40人の設置することを提案したい。
柏市の小学校は42校なので、小学校区に1人を想定。
司書という枠にとどまらない。その地域の情報を収集し、保存•整理し、編集し、発信し、人々を巻き込み、地域を活性化させるような役割をイメージしている。
まちなか図書館を設置といっても、独自の施設を新しく設けるのではなく、民間で図書を公開している施設と提携し、既存の図書館分館や学校図書館とのネットワークを構築していくものである。カフェの本棚や空きスペースを活用した青空文庫など、本のある素敵な場が沢山ある柏は魅力的だと思う。
たとえば、キネマ旬報シアターでは、「キネマ旬報」バックナンバーなど貴重な映画関連図書をKINEJUN図書館として公開されている。そうした場と協力し、資料を活用し、映画を学び、楽しめる場を作るコミュニティプロデューサーが専属で設置されれば、その場の価値や魅力は何十倍にもなりうる。
他にも、スポーツや園芸、ワインや食、生き物や宇宙などといった特色ある場づくりとともに、歴史や自然など地域ならではの情報やネットワークが生まれる場としての「まちなか図書館」を考える。
移動博物館やVRも加えて、柏市全体を学びの街としていきたい。
写真は、移動博物館をイメージした落書きです。
【まちの魅力を高める図書館・公民館】
まちの魅力は、そこに集まる人々が育ててきたコミュニティや文化だ。そう感じるようになってきた。まちに人が集まり、情報が集まり、混じり合い、新しい価値が生まれる。インターネットで情報や商品が得られたとしても、まちでしか得られないものがあると信じている。
「よい」コミュニティや文化があり、新しい価値を生み出す魅力のあるまちは、どのようにして生まれたのか?
どのようなまちが「よい」と言えるのかを話し合い、その「よい」まちのメカニズムを研究し、その実現に向けて力を合わせていけるような働きかけを考えている。
人が集まり、情報が集まり、混じり合い、新しい価値を生み出していく拠点が、まちには必要だ。そこで、図書館や公民館に注目している。
寺山修司が「書を捨てよ町へ出よう」と世に投げかけているように、まちと本や図書館はかけ離れた存在というイメージがあった。
しかし、今、従来の図書館や公民館の枠を越え、多様な知が集まり、地域の文化や社会を支えていくような場としての役割を期待されている。居場所(サードプレイス)、地域の医療・福祉、ビジネス、働き方改革、防災、まちづくり、文化創造の拠点となるような場が求められている。
拠点といっても、中心になる人ばかりではなく、まちに居場所のなかった人たちでも安心のできる場を考えている。
戦後、公民館を提唱した寺中作雄氏は、以下のような考えを持っていた。
公民館は様々な機能をもった施設である。社会教育、社交娯楽、地域コミュニティ拠点、産業振興、子どもたちの教育の機関であり、その他にも可能性を持たせる。公民館は、地域住民の中心機関である。
現代において、まさに注目すべき考えだ。
【柏の顔となる文化・教育の拠点を】
柏市議会でも、図書館について議論してきた。 そごう跡地に、文化・教育の拠点となる複合施設を設置することも提案している。柏市の図書館書庫、行政資料室、文化財収蔵庫、学校図書館支援センター、教育センターの課題をそれぞれ指摘し、その解決策を示してきた。
一つ一つの課題に対処療法的な改修事業を実施するのではなく、どんな都市を目指すのか明確なビジョンを示し、これからの柏市を引っ張っていくことが、今、求められている。8年前の図書館建設中止以降、停滞してしまっている議論を巻き起こすことだ。
いわゆる図書館だけではなく、博物館、美術館、公文書館、教育センター、子育て支援センターが、組織の垣根を越えて融合した文化施設を、柏駅前に設置することを求める。
全国の地方都市の駅前で百貨店が撤退している。この事態をチャンスとして考え、文化・教育を中心にすえた「住みよいまち」というビジョンを、柏駅前で実現させるべきではないだろうか。