【高齢者の事故急増?】
自動車は、私たちの行動範囲を飛躍的に広げた文明の利器である一方、人の命を奪う凶悪な機械でもある。日本で交通事故は、年間約54万件。そのうち死亡者は約4,000名。ちなみに日清戦争での負傷者が約6,500名、そのうち死亡者が約1,100名とのこと。
通学中の児童が事故にあったニュースもあり、通学路の安全が点検され、安心して子供が歩ける道路作りが求められている。
最近、特に目に付くのが高齢者による交通事故である。道路を逆走する、ブレーキとアクセルを間違える、体力•注意力の衰えなど。免許返納が議論されているが、地方都市では、車のない生活は厳しいという現状がある。
高齢化社会の深刻な課題である。
【AI(人工知能)の発達と自動運転の実用化】
ただ、なぜ急に、高齢者の事故が大きく報道されるようになったのか?
考えてみる必要がある。もっと報道すべきニュースは、沢山あるはずだ。
たしかに、高齢者の事故は年々増えてきているが、最近の取り上げられ方には意図を感じる。それは、自動運転実用化への準備だ。
これまで、自動運転と聞くと「事故になったら•••」という不安の声がセットになっていた。いくら人工知能の技術が進んでも、多くの人が抱く不安を解消しなければ、車が売れないどころか、法整備が進まない。そこで、高齢者の事故が大きく取り上げられたのではないか。
「人間だって事故を起こす、いや、人間の方が事故を起こす」、と。
アメリカ、シンガポール、ドイツ、イギリスなどでは、社会実験として、自動運転車が公道で走り始めた。日本でも始まるだろう。
そのうち人間が運転できるのは、特定の道路だけになってしまうのではないだろうか。休日、人間が運転できるサーキット場やハイウェイに行き、乗馬のような形で車を楽しむようになるかもしれない。
【未来の道路、未来のまちづくり】
もはや、自動運転は大きな社会の流れとなっている。これからの交通政策、道路整備や都市計画は、自動運転を念頭において考えなければならなくなった。
自動運転車によって、通行量をコントロールすることもでき、渋滞の解消にも役立つと言う。車に乗りたいときに、乗りたい場所に、安価で移動できるようになると、車を所有する必要もなくなってくる。カーシェアが促進され、車の台数は減るといわれる。
駅前を中心に、街を集約していく都市計画が進められることになる。
一方で、車が事務所や住まいと同様の機能を持つ可能性もありうる。技術や働き方・生き方の変革が進むと、これまでの考え方が根底からくつがえされることになるだろう。
その場合は、事務所や住まいとなる自動運転車の拠点を作ることができるかどうかが、これからの柏の未来に関わってくる。柏駅を設置し、急行が止まる駅になるよう働きかけた先見の明のある当時の地権者のように、これからの交通拠点を目指した動きが期待される。
話が未来の話になりすぎた。しかし、そんなに先の事でもない。人工知能が人間を超えるのが2,045年と言われているが、おそらく、もっと早く、その時は訪れるだろう。
経済産業省は、人工知能(AI)の産学官連携拠点を新設する。その拠点の一つが、柏の葉に置かれることが決まった。2017年度末にも開設される予定である。国内外から研究者を集め、企業と共同開発する。AIとものづくりを融合し、第4次産業革命を後押しするとまで言われている。こういった機会をとらえ、これからの柏市に生かしていきたい。
【まずは、歩いて暮らせるまちへ】
ここ数年の話に目を移す。
人口減少と高齢化社会では、歩いて暮らせる街づくりが求められる。コミュニティバスなどを活用し、交通空白地をなくし、車がなくても移動できる公共交通を充実させる。歩いて楽しめる歩道を設置し、街のにぎわいや市民の健康増進のまちづくりを行う。
東京都ではオリンピック・パラリンピックに向けて、電柱を地中に埋めるとのこと。景観だけでなく、歩道が広がる。
人口減少で、自動車通行量も減る。車のスペースを減らし、歩行者のためのスペースを増やす。歩道を広げるために、車線を一方通行にしなければならないことも出てくるだろう。
子どもが道路で遊べるくらい、安心安全な道路が求められている。
また、道路上に、ちょっと休憩したり、お茶を飲んだりすることができるベンチやオープンカフェも検討されている。
街路樹や花が美しく、自転車も通行しやすい道路は街の魅力を高めることになる。
電動車いすやセグウェイなど、移動する機械も様々なものが出てくる。ますますバリアフリーのまちづくりが目指される。
技術は、日に日に進歩し、機械やインフラは整備されていくだろう。大切なのは、私たちの心のバリアを取り払っていくことである。