視察から学ぶ人、学ばない人

議員や行政職員は、視察して先進事例を研究します。自治体間での視察は、国からのトップダウンの政策と違い、自治体同士が学び合う「草の根」の改革と言えます。

視察が来る事業は、自治体内でも評価されることになります。近くの人が知らなくても、外から見るとすごい事業というのもあるものです。
視察が多すぎて受け入れが困るようになってくると、視察ビジネスへの展開も見込めます。一つの自治体での事業が、他の自治体に波及していくことになるのです。

実際に足を運んでみることでしか分からないことも沢山あります。
また、視察団の中での学びがあります。移動時間にも、ざっくばらんなディスカッションができます。特に、議会の委員会視察では、会派の違う議員で構成されているので、貴重な場です。

しかし、視察や先進事例から学ばない人もいます。
歴史のある自治体に行くと、ここは歴史があるからできるんだと言い、
新しい自治体に行くと、ここは歴史がないからできるんだと言い、
財政が豊かな自治体に行くと、ここは財政が豊かだからできるんだと言い、
財政規模の小さい自治体に行くと、ここは小さい街だからできるんだと言い、
市民協働の進んだ自治体に行くと、市民の意識が違う言い、
海外に行くと、ここは日本とは違うからと言います。
違いばかり、指摘するのです。

また、視察先の事業を評価しなかったり、うちの自治体は大丈夫だからと危機感のない態度では、視察から学ぶことができません。

これは自分自身への戒めでもあります。

たとえ、大したことのない事業でも、PRや情報発信について、自治体が一体となって取り組んでいる様子、自分の自治体では見えないことが見えるなど、学ぶべきものはあるはずです。

これは視察に限らず、吉川英治さんが「吾以外皆吾師」と仰っているように、どんな人からでも何かを学び取っていくことが大切だと思います。

※追記
市民の代表として、税金で視察して来たわけですから、内容について市民に知らせる義務があるとのご指摘を頂くことがあります。

これくらいで視察報告を行ったというつもりはありませんが、議会にて視察報告が行われ、その内容が映像と議事録で議会HPで公開されています。よかったらご覧ください。
http://www.city.kashiwa.lg.jp/soshiki/222000/p008540.html
平成27年6月5日 刈谷市・岡崎市 建設経済委員会委員では、副委員長として山下が報告させていただいています。

視察報告の問題だけではありませんが、議会や行政と市民とのコミュニケーションの課題だと認識しています。ホームページでの公開では不十分なのは確かですが、視察報告書を全戸配布すればいいというものではないと思います。

私も開催していますが、対話集会や報告会を開催しても人が集まらないというのも各議員さんから聞きます。議会、議員個人の発信には限りがあります。どのようにして市民の皆さんにご関心を持っていただけるようにするかが大きなテーマです。
私も微力ながら、SNSや街頭での演説、毎月の対話集会、山下洋輔新聞の配布など、できる限り頑張りたいと思います。

投稿者:

山下 洋輔

千葉県議会議員(柏市選出)。 元高校教諭。理想の学校を設立したいと大学院に進学。教員経験、教育学研究や地域活動から、教育は、学校だけの課題ではなく、家庭・地域・社会と学校が支え合うべきものと考え、「教育のまち」を目指し活動。著書『地域の力を引き出す学びの方程式』 2011年から柏市議会議員を3期10年を経て、柏市長選に挑戦(43,834票)。落選後の2年間、シリコンバレーのベンチャー企業Fractaの政策企画部長として公民連携によってAIで水道管を救う仕事を経験。 柏まちなかカレッジ学長/(社)305Basketball監事。 千葉県立東葛飾高校卒業。早稲田大学教育学部卒。 早稲田大学大学院教育学研究科修士課程修了後、土浦日大高校にて高校教諭。早稲田大学教育学研究科後期博士課程単位取得後退学。 家族 妻、長男(2014年生まれ)、長女(2017年生まれ)