満州建国大学の卒業生たちの物語

三浦英之『五色の虹』(集英社)を読みました。
旧満州の最高学府である建国大学の卒業生たちについて書かれた本です。きちんと歴史が残されてこなかった建国大学について、関係者が高齢化した最後ではないかというタイミングで書かれたものです。

近代の日本を考える上で、植民地については十分ではなかったのではと気付かされます。台湾、朝鮮、満州という問題が集約されたのが建国大学という教育機関だったと、山室信一教授は指摘されています。

現在、グローバル教育や国際理解教育が行われていますが、建国大学は、すでに戦前に取り組んでいました。
民族協和という理想と現実。建国大学の理念とその崩壊。異文化、異民族が互いに分かり合う難しさ。それでも卒業生たちが、言論の自由が保障され、異なる民族が毎晩のように議論していたことは大きかったのではないかと思います。
「衝突を恐れるな。知ることは傷つくことだ。傷つくことは知ることだ。」
卒業生たちの言葉の力を感じます。

建国大学の卒業生は、シベリア抑留や日本のスパイなど、それぞれの国で戦後に苦労されています。なかなか表に出ない歴史かもしれません。しっかりと勉強していきたいです。

投稿者:

山下 洋輔

千葉県議会議員(柏市選出)。 元高校教諭。理想の学校を設立したいと大学院に進学。教員経験、教育学研究や地域活動から、教育は、学校だけの課題ではなく、家庭・地域・社会と学校が支え合うべきものと考え、「教育のまち」を目指し活動。著書『地域の力を引き出す学びの方程式』 2011年から柏市議会議員を3期10年を経て、柏市長選に挑戦(43,834票)。落選後の2年間、シリコンバレーのベンチャー企業Fractaの政策企画部長として公民連携によってAIで水道管を救う仕事を経験。 柏まちなかカレッジ学長/(社)305Basketball監事。 千葉県立東葛飾高校卒業。早稲田大学教育学部卒。 早稲田大学大学院教育学研究科修士課程修了後、土浦日大高校にて高校教諭。早稲田大学教育学研究科後期博士課程単位取得後退学。 家族 妻、長男(2014年生まれ)、長女(2017年生まれ)