【柏市議会】自治体新電力事業について-永山ともひと議員の一般質問(2025年3月議会)

私は、2011年市議会議員となった頃から、地域経済活性のために、地域の経済循環に着目し、中でも規模の大きい金額が流出しているエネルギーに着目し、「エネルギーの地産地消」について議会でも、そして2021年の柏市長選挙でも主張してきました。

エネルギーの地産地消
市内で発電し、これまで市外に流出させていた光熱費を市内に循環させ、収益を公共交通や緑地保全に還元し、災害時にも備えます。

山下洋輔の政策集「柏はもっとよくなる。」

今年1月には、市川市と京葉ガスによる地域電力会社について視察もしてまいりました。

市川市と京葉ガスによる地域電力会社設立-千葉県内の視察1

永山ともひと議員が、2025年3月の柏市議会で取り上げられています。
ライブ配信でもお話ししていただきました。

以下、議会の質疑・一般質問と当局からの答弁です。

環境政策、自治体新電力事業について。
本定例会開会日における太田市長の施政方針の中でも触れられましたが、令和7年度予算案の重点項目「気候変動への対応と、脱炭素社会に取り組むまち」について、自治体新電力を設立することを表明されました。
この取り組みを始める自治体も増加しており、電力の地産地消を進める、などの観点から柏市においても事業化に向けて着実に歩みを進めて頂きたいと私も考えております。この事業展開にあたり、自治体新電力ポテンシャル調査、投資適格性にかかる監査法人の事業評価をそれぞれ実施されましたが、この点について伺います。
まずひとつ、自治体新電力ポテンシャル調査をP社に委託した理由をお示しください。

2つ、ポテンシャル調査の中で触れられている電力の自己託送について
電力の地産地消のための利活用として、自治体新電力のほか、自己託送制度という選択肢もあり、併用が可能であることも記載されています。
自己託送とは、民間事業者でいうならば、自社の自家用発電設備により発電した電力を、他地域にある自社工場等に供給した場合に、余剰電力の安定供給に資するということで制度化されたもので、再生可能エネルギー発電促進賦課金、再エネ賦課金が不要になるなどのメリットがあります。
一方で、再エネ賦課金が免除になるということを濫用し、回避するケースが民間事業者で相次いだことから、現在経済産業省は新規の受付を停止しています。再開に向け、一定の条件を設けることなどが検討されていますが、仮に自己託送の受付が再開された場合、計画書の提出やメンテナンス費用を考慮した上で実施する考えがあるのかをお示しください。

3つ、蓄電と蓄熱によるエネルギーマネジメントについて
再生可能エネルギーの普及によって全国で出力の抑制が増加し、清掃工場からの廃棄物発電であっても出力抑制を要請される事例が出てきているとのことです。
現在は特例によって対象外となっていますが、今後出力抑制の対象となった場合、売電が難しくなることも想定されるとの記載があります。
蓄電池の低コスト化が進む昨今、清掃工場で生み出された電気を出力抑制時に貯めて、市場での調達価格が高い場合に放電するといった効果的な運用、さらに非常時におけるBCP向上にも資すると考えますが、これについて現状どのように考えているかをご答弁ください。

4つ、投資適格性調査報告書について
監査法人からの「今後検討が必要な課題」として「委託会社への代表権を付与する場合は十分に配慮が必要」との旨が記載されています。電力事業に知見のある委託会社が責任をもって業務運営をするための措置と考えられますが、市と委託会社との間で方針に食い違いが出た場合、市が単独で経営意思決定ができないリスクも生じうるという指摘もあります。そして今回の委託会社は、「17社ほど新電力会社の業務実績があるがすべて出資及び役員を派遣しており、役員はその大半が代表権を持っている」と述べられています。代表権を与えるか、与えないかは今回の新電力事業の立ち上げにあたり重要なポイントであると思いますが、この点について現在どのようにお考えでしょうか。

最後いつつ、利益相反の回避について。今述べさせて頂いたように代表権を持つ役員が調査会社から派遣された場合、発注者と受託者が同じ代表権を持つことにより、新電力会社の意思決定は利益相反となります。このため、委託会社では、従来、協定書等を締結して双方が事前に了承することで利益相反行為を回避しているとのヒアリング結果があります。協定書の内容を含め、この利益相反についてどのように考えているのか、見解をお示しください。

次に(2)事業展開の見通しについて伺います。先月24日、会派視察として大阪府泉佐野市の自治体新電力を視察させて頂きました。

柏市が株式会社で立ち上げを予定している一方、泉佐野市の自治体新電力は、一般財団法人での立ち上げ・運営を行っていました。特徴としては、①法律により、利益や余剰金、財産の分配ができないこと、②解散時の残余財産は国もしくは地方公共団体に寄付、③純資産額が2年連続で基本財産を下回る状態になった場合は解散などが挙げられます。そこで伺います。柏市の自治体新電力事業を株式会社とした理由については、先日我が会派の岡田議員の代表質問に対し、「多くの出資を受けやすい」「遵守すべきルールが多い」旨の答弁がありましたが、改めて、今あげた泉佐野市の一般財団法人の特徴を上回るメリットがあればお聞かせください。

そして、泉佐野電力は令和2年度、電力市場の急変によって1800万円ほどの決算赤字となり、泉佐野市議会の議決の上、3200万円の補助金を受けました。柏市の自治体新電力株式会社が仮に大幅な赤字や資金繰りが悪化した場合はどうするのか、対応策をご答弁お願いします。

また、電力の需給管理体制についても伺います。泉佐野電力では、電力の需給管理を定額で外部委託しているとのことでした。需給管理には専門的な知見が必要なため外部委託すること自体に問題はないようですが、計画した電力調達量と実際の需要に大きな乖離が発生した場合の損失はすべて泉佐野電力が被るというデメリット、さらに需給管理を委託されている会社も需給予測が合致した場合にインセンティブがないといったことを課題として挙げていました。そこで伺います。電力の需給調整はどのように行っていくのか、またインセンティブについてはどのように考えているのか、計画をお示しください。

そして家庭などに向けた低圧電力の供給開始見込みですが、泉佐野電力は「請求書の発送業務などの手間が多く、利益が小さい」との見解でしたが、柏市はこの低圧電力の供給開始についてどのようにとらえ、開始時期の見込みを持っているのかご答弁をお願いします。

この項目の最後に、地域課題の解決とは具体的に何かお示しください。

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令和 7年第1回定例会 答弁

自治体新電力会社に関するご質問にお答えします。

はじめに、自治体新電力事業の事業性にかかる外部評価についてお答えします。

本市における自治体新電力事業の事業成立性を検証すべく,令和5年度に「自治体新電力ポテンシャル調査」を行ったところですが、その調査にあたっては、プロポーザル方式により実績、知見、委託金額等を比較評価し事業者を選定しました。

次に,自己託送に対する考え方についてですが、自己託送方式は,小売電気事業ではなく、「自ら発電した電力を,一般送配電者が維持・運用する送配電ネットワークを介して自ら消費する」ことから,市としては、一定の経済的メリットが生じると考えます。

その一方で,供給する施設と,それに伴うCO2排出量削減効果は限定的となることから,「柏市役所ゼロカーボンアクションプラン」に掲げる削減目標の達成に大きな影響が生じることが懸念されます。

また、南北クリーンセンター等が発電する電力は、自治体新電力会社の電源構成の約45%を見込んでおり,これが無くなると,供給する電

カ全量を電力市場から調達しなければならず、「経営の安定性」が損なわれる恐れがあること、更には、会社利益の一部を,「地域脱炭素」等の事業に再投資をしていく考えであることから、現時点では、自己託送の実施は想定しておりません。

次に、ポテンシャル調査において提案されている「廃棄物発電の蓄電や蓄熱によるエネルギーマネジメント」についてですが、近年,蓄電・蓄熱技術が進歩していることから、南北クリーンセンターにおける廃棄物焼却の際に発生する「蒸気」や「電気」を蓄え、市場価格が高いタイミングで放熱・放電することは効果的であると考えられますが、こうした設備の導入にあたっては、敷地内に設置スペースが必要なこと、また、多額の費用負担が生じることから、現時点では、具体的な検討に至っておりません。

今後もエネルギーの更なる活用を図るべく、国の動向や技術革新に注視するとともに、他市の事例等を研究してまいります。

次に、今年度に実施した「自治体新電力事業投資適格性評価」についてですが、これは、令和5年度に実施しました「自治体新電力ポテンシャル調査」の報告内容に関し,第三者的な観点から、その事業への投資の適格性にかかる公正な判断を得るべく、監査法人による事業評価を行ったものです。

この評価報告書では、「自治体新電力ポテンシャル調査業務」を請け負った委託会社にもヒアリングを実施しており、「この委託会社が新電Fn

力会社に参画する場合」や「市が出資し代表者となった場合の利益相反」についても触れておりますが、新電力会社の出資者や事業実施体制,役員の構成については、これから、出資者を募っていくことから,現時点では未定であります。

今後、出資者や役員を選定する際は、報告書における助言に十分に留意しながら、手続きを行ってまいります。

次に、自治体新電力事業の事業展開の見通しについてお答えします。

はじめに、株式会社を選定した理由メリットですが、先日の岡田議員にも答弁させていただきましたが、事業への参入がしやすく,事業への有用性が高く、かつその収益を地域課題の解決に還元する際に事業協力者と協議をしながら行うことができると考えております。

次に電力の需給管理についてですが、電力の供給にあたっては、停電や電力不足を防ぐため、小売電気事業者は電力の需要量と供給量を予測し,30分毎の「需給計画」を「電力広域的運営推進機関」へ提出します。こうした電力の需給予測は、経験や専門的な知識を要することから、当初は,専門事業者への委託を想定しております。

また,この「需給計画」と「需給実績」にズレが生じた場合,その「調整費用」を小売電気事業者が負担することとなります。この「調整費用」は、小売電気事業を営む上で必要な費用であることから、和5年度に実施した「ポテンシャル調査」では、この費用を考慮した上で事業収支の試算を行い、「事業採算性あり」との結果を得ております。

次に新電力会社が赤字となった場合の対応についてですが、今回,新電力会社の法人形態は株式会社を想定しており,赤字決算となった場合は、その時点での役員会や株主総会にて経営判断がされるものと考えております。今回、この自治体新電力会社については市が2/3の出資を予定しており、経営の明瞭性や健全経営についてガバナンスを効かせてまいります。

次に低圧受施設や民間への電力供給の拡大,収益の地域還元についてお答えします。

新電力会社では、当初は、市の公共施設のうち、高圧受電施設約90か所への電力供給を想定しておりますが、低圧受電施設への電力供給等,需要拡大や,収益の地域還元は,「投資適格性評価等」にて、「事業開始後3年目を目途に実施を検討することが望ましい。」旨の助言を受けていることからも,事業開始後の経営状況を踏まえて,事業の拡大を図っていくことが望ましいと考えております。

なお、「地域課題の解決」に資する事業内容につきましては、新電力会社において決定されるところですが、市では、新電力会社に対して「地域の脱炭素化」を加速化させる役割を期待していることから、まずは、太陽光発電設備の設置にかかる補助事業等、市域における再生可能エネルギーの普及にかかる取組が望ましいと考えております。

自治体新電力会社の設立により、脱炭素化をはじめとする地域課題が解決し、以て,持続可能な地域社会が実現できるよう、引き続き、準備を進めてまいります。

投稿者:

山下 洋輔

千葉県議会議員(柏市選出)。 元高校教諭。理想の学校を設立したいと大学院に進学。教員経験、教育学研究や地域活動から、教育は、学校だけの課題ではなく、家庭・地域・社会と学校が支え合うべきものと考え、「教育のまち」を目指し活動。著書『地域の力を引き出す学びの方程式』 2011年から柏市議会議員を3期10年を経て、柏市長選に挑戦(43,834票)。落選後の2年間、シリコンバレーのベンチャー企業Fractaの政策企画部長として公民連携によってAIで水道管を救う仕事を経験。 柏まちなかカレッジ学長/(社)305Basketball監事。 千葉県立東葛飾高校卒業。早稲田大学教育学部卒。 早稲田大学大学院教育学研究科修士課程修了後、土浦日大高校にて高校教諭。早稲田大学教育学研究科後期博士課程単位取得後退学。 家族 妻、長男(2014年生まれ)、長女(2017年生まれ)