県議会での議論をいち早くお伝えいたします。
来年度の当初予算案は2兆1000億円。その予算案を話し合う予算委員会です。
※予算委員会について
予算及びこれに関係する議案のうち、原則として2以上の常任委員会が所管する議案を審査します。なお、議案の採決は行いません。
委員会は、原則として毎年2月定例県議会の会期内において開催し、その日数は、概ね3日以内です。
栗原直也 委員(立憲民) 質問項目
- 視覚障害者支援について
- 農福連携について
- 中核地域生活支援センターについて
議会質問・答弁の書き起こし全文
–委員長
次に、栗原直也委員。
–栗原直也 議員
はい。立憲民主党四街道市選出の栗原直也でございます。
それでは通告に従いまして質問をいたします。
まず初めに、障害者福祉に関連した中から、視覚障害者への支援について伺います。
現在国内には32万人以上の視覚障害者の方々がおられます。視覚からの光や情報などが全く得られない中で生活する全盲の方々、あるいは視覚からごくわずかな情報しか得られない、弱視や視野狭窄の方々など、大変困難な環境の中での生活を余儀なくされています。
そのことから昨年の12月議会では、県内唯一の盲学校や点字図書館、視覚障害者総合支援センターなど、視覚障害者の支援機関が集中する地域の議員として、視覚障害者の交通安全対策について、とりわけ音響式信号機やホームドアの設置の必要性などの質問をさせていただきました。
そのことから、健常者が普段意識せずに利用している公共施設や交通機関、さらには、日常生活の中に、視覚障害者にとっては驚くほど危険で困難な状況があることに改めて気づかされました。
そこで今回は予算の関係も含め、視覚障害者への支援状況について質問をさせていただきます。
まず、障害者、IT支援事業について伺います。
視覚障害者にとりましては、パソコンやスマートフォン、タブレットなどのIT機器は、日常生活や他者とのコミュニケーション、さらには自立した生活を送るための必須の情報ツールです。
さらに文字の音声変換ソフトや拡大ソフトなどの利用により、視覚障害がありながらも、健常者とともに仕事に従事することが可能となります。
しかしそのためには、IT機器を十分に使いこなすための訓練が必要なことから、県では、プロポーザル方式による障害者IT支援事業を実施しています。
そこでこの障害者IT支援事業の内容と、令和6年度の予算額はどうか伺います。
–委員長
健康福祉部長。
–高梨みちえ 健康福祉部長
障害者IT支援事業は、視覚に障害のある方等の情報バリアフリー化の推進に向けた総合的なIT支援として、障害者ITサポートセンターによる相談支援の他、パソコン、スマートフォン等の利用促進に向けた講座等の開催を民間事業者への委託により実施しており、令和6年度当初予算では1161万7000円を計上しています。
–委員長
栗原委員。
–栗原直也 議員
では次にこの委託費がどのように算定されているのかお尋ねいたします。
–委員長
健康福祉部長。
–高梨みちえ 健康福祉部長
障害者IT支援事業の委託費は、障害者ITサポートセンターでの相談対応や、講座での情報通信機器の初歩的な操作方法等の指導に要する人件費などの諸経費を算定しました。
–委員長
栗原委員。
–栗原直也 議員
ご答弁ありがとうございました。令和6年度予算が1161万7000円の委託費とのことですが、さかのぼって過去3ヶ年分の委託費の状況はいかがでしたでしょうか。
–委員長
健康福祉部長。
–高梨みちえ 健康福祉部長
令和3年度から令和5年度の委託費は、毎年度1161万7000円となっております。
–委員長
栗原委員。
–栗原直也 議員
はい。過去3年間においても、また令和6年度予算におきましても、この障害者IT支援事業の委託費にほぼ変わりがない状況が確認されます。
この障害者IT支援事業は、令和4年度は県視覚障害者福祉協会が3団体の共同事業として県より受託しており、県視覚障害者福祉協会の事業実績として、年10回のITサロンの開催、パソコンの購入から初期設定、ソフトのインストールなどの他、ITの相談件数は542名から708回技術講習は303名に418回実施しています。
またこの事業は、1名の正規職員と1名のパート職員の2名体制で運営しており、契約期間も従前の7月から翌年3月までの期間から、令和4年度以降は4月から翌年3月までの通年体制での運営に変更されました。
この事業における委託費の大半は、人件費に基づく算定と思われますが、受託した3団体のうち、県視覚障害者福祉協会の運営費は418万円となり、パート職員の給与、正規職員の2分の1程度と仮定しますと、県視覚障害者福祉協会の正規職員に支払われる給与の上限は、およそ280万円程度と推測されます。
そこでお尋ねしますが、この委託費の状況についてはいかがお考えでしょうか。
–委員長
健康福祉部長。
–高梨みちえ 健康福祉部長
委託費については、相談にあたる日数や講座の開催時間数等を踏まえ、必要な予算を確保したところです。
–委員長
栗原委員。
–栗原直也 議員
それでは令和4年度より委託期間が3ヶ月間延びながら、委託費が変わらない状況についてはいかがお考えでしょうか。
–委員長
健康福祉部長。
–高梨みちえ 健康福祉部長
委託期間の変更は、年間を通じて事業が実施できるよう見直しを行ったものであり、金額を提示したプロポーザルにより応募があった事業者と契約したものです。
–委員長
栗原委員。
–栗原直也 議員
この障害者IT支援事業の委託費については、この日の一般的な正規職員の人件費と比較するまでもなく、大変厳しいものであると考えております。この状況では貴重な人材の流出不安ばかりか、事業の継続自体が困難になることも予想されます。
さらに働く職員の側からも、家庭を持つことに躊躇せざるを得ない状況とも言えます。
ぜひこの委託費の算定についてご検討くださるよう要望いたします。
次に視覚障害者が書物や情報を取得するための点字図書館についてお尋ねします。
現在6ヶ所ある北海道や東京とは特別都市でも、関東では、神奈川県、群馬県、埼玉県などで複数の点字図書館が設置されています。
それぞれ自治体内で設置主体が異なるとはいえ、千葉県では県視覚障害者福祉協会の設置による1ヶ所のみで、県の補助を受けながら運営されている状況です。全国的に見ても、そのほとんどが県と政令市や中核市、または社会福祉法人が設置者となり、複数の点字図書館が運営されている状況にあります。
そこで県が設置者となる新たな点字図書館が必要ではないかと思われますが、県としてのお考えをお尋ねいたします。
–委員長
健康福祉部長。
–高梨みちえ 健康福祉部長
千葉展示図書館では、貸し出し図書等の無料郵送サービスを県内全域で受けられるようにしており、多くの方がこのサービスを利用していることから、新たな点字図書館の設置については現状では検討しておりません。
–委員長
栗原委員。
–栗原直也 議員
現在県内の点字図書館は四街道市視覚障害者総合支援センターの中のみに設置されており、船橋や東葛地域などからは大変利用しづらい状況にあります。
視覚障害者が遠方の不慣れな地域に移動することは、鉄道利用や道路横断など、想像以上に大変なことであり、ぜひ新たな建設による展示図書館の設立をお考えいただけるようお願いいたします。
–栗原直也 議員
次に歩行訓練士についてお尋ねします。
この歩行訓練士は国家資格ではありませんが、視覚障害者への歩行訓練や、日常生活に必要な動作、技能などの訓練を指導します。
高齢化の中で増加する中視覚障害者には、歩行訓練や日常生活訓練は欠かせないものでありながら、県視覚障害者福祉協会でも、現在30数名の視覚障害者が指導を待っている状況と伺っています。
そこで歩行訓練士の育成に関する補助について県はどのようにお考えなのかお尋ねいたします。
–委員長
健康福祉部長。
–高梨みちえ 健康福祉部長
県では、歩行訓練士の育成に対する補助は行っておりませんが、中途視覚障害者自立更生支援事業において、中度で視覚障害となった方に対する歩行訓練等を行う事業を、障害者団体に委託して実施しております。
–委員長
栗原委員。
–栗原直也 議員
この歩行訓練士になるためには、4年制大学を卒業後に養成機関で学ぶ必要があり、2年間に3,000時間を超える履修が求められる他、授業料などの費用負担も年間に40万円を超える場合があります。また養成機関は所沢市と大阪市に設置された2校のみであり、養成課程の修了者数は、2018年時点で全国に742人しかおりません。
県内でも多くの視覚障害者が、歩行訓練士の指導を待ち続けており、卒業後に千葉県内で活動してもらうためにも、県内就労などの条件を付した授業料補助などの支援が求められるものと考えます。
ぜひご検討いただけるようお願いいたします。
また中途視覚障害者自立更生支援事業は、県視覚障害者福祉協会が受託しておりますが、正規職員1名とパート職員1名の2名の体制により、千葉市船橋市、柏市、市川市、松戸市を除く県内全域での歩行訓練士の派遣事業を実施しています。都市部だけではなく、房総半島などの郡部においても、歩行訓練士の要望が多く、1日に1件しか行けないところもあると伺っています。
県からの850万円の委託費を受けて、2名体制を敷いていますが、社会保険料負担や交通費などを考慮すると、歩行訓練士の資格に見合った給与を確保することが、大変厳しい状況にあるものと思われます。
さらに先ほどもお話しましたが、県視覚障害者福祉協会だけでも、歩行訓練や日常生活訓練の待機者は、30名を超えており、その中には2週間後に歩行訓練士が訪れる予定でありながら、自宅2階から階段を転落し、骨折した一級視覚障害者の高齢女性の方もおられます。
このような残念な事例をなくしていくためにも、新たに歩行訓練士を増員し、待機者を減らしていくための中途視覚障害者自立更生支援事業へのより一層の予算の拡充が求められるものと考えます。
この点についてはいかがお考えでしょうか、お尋ねいたします。
–委員長
健康福祉部長。
–高梨みちえ 健康福祉部長
中途視覚障害者自立更生支援事業については、歩行訓練やワークス訓練などの委託内容に応じた予算を計上したところですが、実施にあたっては、受託団体とも協議をしながら、利用者のニーズに合った訓練が受けられるよう努めてまいります。
–委員長
栗原委員。
–栗原直也 議員
ぜひご検討いただけるようお願いをいたします。
次にも養護老人ホームについて伺います。養護老人ホームは全国で51ヶ所を開設されており、県内では調子市に猿田の丘なでしこが唯一の施設です。1972年に千葉県が設置したもので、2016年には行財政改革の一環から、安定的な経営や質の高い福祉サービスの実現を理由として、社会福祉法人恩賜か、恩賜財団済生会に譲渡されたものです。
こんにち視覚障害者の高齢化や中途失明者の割合が上昇するなど、本来ならもう養護老人ホームの入居率も高いまま、安定した経営が想定されますが、この養護老人ホーム猿田の丘なでしければ、新型コロナウイルス感染症の影響や、施設の老朽化などから、入居率が定員の6割にまで落ち込んでいる状況です。
これまでも、人件費への補助等がなされていますが、この現状では、事業そのものが行き詰まる可能性が高まります。そこでも養護老人ホーム猿田の丘なでしこの経営状況に対する県の認識についてお尋ねいたします。
–委員長
健康福祉部長。
–高梨みちえ 健康福祉部長
養護老人ホーム猿田の丘のかなでしこにおいては、総じて安定的な運営がなされてきましたが、近年の新型コロナウイルス感染症対策にかかる費用や、物価高騰による光熱費等の増大の影響に鑑み、それぞれに対する支援を行ったところです。
–委員長
栗原委員。
–栗原直也 議員
この猿田の丘なでしこの経営状況を改善させるには、経費の圧縮とともに、財政支援の増額などが考えられますが、根本的な解決策とはなり得ないのではと思われます。養護老人ホームこの施設が建設より既に52年が経過している状況からは、例えば大規模な改築や改修などを実施し、入居率を高めようとしても限界があり、今後は立て直しを含めた根本的な対策が必要ではないかと考えます。
養護老人ホーム今後もこの猿田の丘なでしこの経営状況を確認しながら、支援を継続していただけるよう求めるものです。
そしてこの視覚障害者への支援状況の質問の最後に、県立図書館が中途視覚障害者の読書支援にどのように取り組んでおられるのかお尋ねいたします。
–委員長
教育長県。
–冨塚昌子 教育長
県立図書館では視覚障害者等の読書支援のため、録音図書の制作や貸し出し、対面朗読等を行っており、令和3年度からはオンラインによる対面朗読にも取り組んでいます。
特に中途視覚障害者の中には、これらのサービスを知らない方も多いことから、読書バリアフリー講座や個別相談を通じて周知を図り、引き続き支援に努めてまいります。
–委員長
栗原委員。
–栗原直也 議員
ご答弁ありがとうございました。平均寿命の伸びや高齢化により、60歳以上の視覚障害者の割合は70%を超え、さらに緑内障や糖尿病網膜症などを原因とした中途視覚障害者の数も増加しています。
これらの障害者にとりましては、点字の理解も難しいばかりか、歩行訓練の指導も受けていないことから、図書館での読書環境からは遠のいていく環境にあります。
その意味では、県立図書館による障害者サービスの充実は重要と考えられ、中でもオンラインでの対面朗読は、自宅にいながらの本の内容とともに、絵や写真などの説明も受けられるなど、中途視覚障害者にとって大変利便性の高いものと考えます。今後もより一層の支援企業の機能の充実に期待いたします。
では続きまして、農業と福祉の双方にメリットのある取り組みとして、農福連携についてお尋ねします。
これまで県では、農福連携の普及啓発事業として、各種啓発セミナーや、マッチングなどの実証実験を継続して実施してきました。
そこでこの農福連携の実証実験にどのような成果を期待しておられるのかお尋ねいたします。
–委員長
農林水産部長。
–前田敏也 農林水産部長
実証事業では、農福連携による労働力確保に関心のある農業者と、農作業の請負に関心のある福祉作業所等をマッチングする、お試し納付に取り組んでおります。
この事業を通じて、農業者と障害者との相互理解が深まり、多様な労働力の確保や工賃向上に繋がることが期待されます。
–委員長
栗原委員。
–栗原直也 議員
ありがとうございました。では次に、農福連携の取り組みを広げるため、市町村などの関係者に対し、どのように働きかけているのかお尋ねいたします。
–委員長
熊谷知事。
–熊谷俊人 知事
県内市町村などを対象に先進的な取り組み事例などを紹介するセミナーの開催や、県が作成した農福連携ガイドブックの配布により理解促進を図っています。
また実証、事業を契機に、継続して連携に取り組んでいる現場において、地元市町村や農業者、福祉事業所等が参加する研修会を開催するなど、農業での活動を通じて、障害のある方の自信や生きがいの創出に繋げていけるよう、農福連携の取り組みを広げてまいります。
–委員長
栗原委員。
–栗原直也 議員
ご答弁ありがとうございました。
私の地元である四街道市では、福連携を実施するとともに、商業者や工業者を含めた農商工福の連携事業にも取り組んでおります。
これからも、障害者や各産業団体がそれぞれの得意とする分野で連携することにより、お互いを理解しながら、ともにそのメリットを享受できるような取り組みが求められていると考えております。
–栗原直也 議員
次に、中核地域生活支援センターについて伺います。
こんにちでは、人と人、人と社会とが繋がり、ともに助け合いながら暮らしていくことができる地域共生社会の実現が待たれています。
そのためには、既存の福祉制度の枠に入れず、複雑で、困難な状況に陥っている人々への包括的で重層的な支援体制が求められ、そのための相談支援事業を担う機関が、この中核地域生活支援センターです。
その相談件数は、各センターの合計で、約8万件にもおよび、相談対応は24時間365日続き、さらにアウトリーチやアウトリーチは、自宅や職場、学校やサービス事業所などにもおよびます。
また今回、ICTを使った相談支援事業が予算化され、相談業務の効率化や更なる充実が期待されます。
そこでまず、中核地域生活支援センターの果たす役割と課題について伺います。
–委員長
健康福祉部長。
–高梨みちえ 健康福祉部長
中核地域生活支援センターは、平成16年度の設置以来、24時間365日体制で、制度のはざまや複合的な課題など、分野横断的に福祉の総合相談を実施してきましたが、昨今は包括的な支援体制を整備する市町村への支援や、広域的な困難事例の対応など、その役割はより一層重要なものとなっています。
このような中、人材の育成や、相談記録作成等の事務作業負担が現場の課題であると認識しております。
–委員長
栗原委員。
ありがとうございました。では今後どのようにセンターの強化を図っていくお考えかお尋ねいたします。
–委員長
熊谷知事。
–熊谷俊人 知事
令和6年度は継続的な伴走型相談支援や人材育成に資するため、複数年の委託契約とするとともに、一部のセンターにおいてリアルタイムで相談時の音声情報を文章化する相談内容に適した支援をガイダンスとして表示するなどの機能を搭載したICTツールを試行導入する予定です。
引き続き、デジタル化等による業務の効率化と、相談支援の質の向上について検討してまいります。
–委員長
栗原委員。
–栗原直也 議員
このICTを使った相談支援事業部では、会話の自動文字起こしや相談記録の作成などが行われるもので、担当者の業務量が大きく削減されるものと思われます。
またAIを活用した相談窓口の案内事業では、AIが相談を分類して、適切な支援先に繋げることが期待されます。
どちらも業務量の削減が、相談業務の拡充に効果的と考えますが、個人情報をどのように管理するか、相談員の体験や知識をどのように生かしていくのかが、今後求められるものと考えております。以上で私の質問を終了させていただきます。
–委員長
以上で、立憲民主党の質疑を終了します。