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未来を創る教育の力

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以下、『BE-COM3月号 vol.257』 (2014.3.1 BE・COMときわ通信発行)に掲載より引用

【希望の教育学】
私の学生時代、授業で紹介されたパウロ・フレイレの『被抑圧者の教育学』を読み、教育のあり方やその役割を考えるようになった。フレイレは、貧しい人々に識字教育を行い、自らの境遇を自ら理解し変化させる、そのような教育を実践した人物として有名である。
日本でも、自分たちの生活を見つめ、より良いものにしていこうという生活つづり方運動や生活記録運動が、大正時代から戦後にかけておこっている。下町での職人の生活を記録した『綴(つづり)方教室』や山形県の山村で無着成恭先生が実践した『山びこ学校』は、戦後の教育に影響を及ぼした。
フレイレは、晩年に『希望の教育学』という本も書いた。そのタイトル通り、教育は希望である。彼は、教育の力で、人間の潜在能力が十分に発揮できるような、平等で公平な社会を実現しようとしたのだった。

【貧困連鎖を断つ】
2013年の春に、釧路市の生活保護受給者自立支援プログラムを視察した。人口の約1割(18 人に1人)が生活保護受給者の釧路市では、就労体験のほかに、高校進学の学習支援を実施。地域のNPOと協力し、学習指導だけでなく、子どもたちの居場所ともなっている。埼玉県でも、無料の学習教室と家庭訪問による教育支援を行っている。足立区では、民間の学習塾を活用し、学習教室を実施している。
柏市では、退職校長を中心とするNPO法人教育支援三アイの会が、生活保護を受ける家庭で育った子どもの高校進学支援を柏市と協働で行っている。
今日、高校を卒業していないと就職して働くのが難しい。生活保護を受ける家庭で育った子どもの4人に1人は、大人になって再び保護を受けている現状がある。しっかりと学び、高校を卒業すれば、職業選択の幅も広がる。そのような考えから、教育支援が行われている。
高知県では、発達障がいなど特別な支援の必要ある子どもたちに、組織を横断して対応している。その保護者にも不登校の経験や発達障がいの可能性も多く、基本的な生活習慣や学習習慣が身についていない場合が多い。地域をあげて家庭教育を支援し、発達障がいやその背景にある貧困の連鎖を断ち切ることを最終的な目標にしている。

【教育の機会を保障するために】
教育格差が次世代に引き継がれてしまう状況を解決するために取り組んでいるティーチ・フォー・ジャパンという団体がある。アメリカで成果を上げたティーチ・フォー・アメリカの日本版だ。
ティーチ・フォー・ジャパンは、経済や家庭環境に関係なく、すべての子どもたちが質の高い教育を受けることのできる社会を実現するための仕組みを提供している。具体的には、教員を選抜・育成し、2年間学校現場に派遣し、派遣された教員の研修・サポート、キャリア支援を提供している。派遣された教員は、任期を終えるとそのまま教員を志望する場合もあるが、企業や行政に就職する。教育現場で得られたリーダーシップや現状の把握をもとに、将来、社会のリーダーとして活躍し、教育現場に還元することが期待されている。

【子どもの居場所】
待機児童が課題として取り上げられているが、学童保育や子どもの居場所についても深刻な課題である。子どもが安心して過ごせる場所が少なくなってきている。共働き家庭も多い。地域にもよるが、地域で見守る近所の大人も少なくなった。小学生になると放課後の子どもの預け先が質・量ともに不足していて、結果として仕事を辞めざるをえない。小1プロブレムと言われ、社会問題になっている。
こういった課題に取り組む事例を紹介したい。
長野県佐久市にある岩村田本町商店街が開いた「岩村田寺子屋塾」。ここでは、小学生に「読み・書き・計算」を中心に教えるほか、お稽古事も教え、商店街の活性化と地域の課題解決に取り組んでいる。
民間では、放課後NPOアフタースクールが、子どもの放課後の居場所作りに取り組んでいる。柏では、高齢者など地域の大人の力を活かしたネクスファという民間の学びの場がある。身近にある環境や社会の課題を生きた教材に、未来を作っていく力を育てている。
柏市では、学童保育や放課後子どもルームがあるが、福祉部と生涯学習部の担当部署や学校とのさらなる連携や、質・量の充実など、求められるところが沢山ある。

【地域で支える教育の場】
土曜の授業や部活動のあり方などの議論を通して、地域に開き、地域の大人の力を借り、学校運営をしていこうという動きが出てきている。授業の見守りや図書館指導員、花だんの整備、部活動のコーチ、地域の昔ながらの遊びや読み聞かせなど、地域のボランティアが学校を変え始めている。
日本では、コミュ二ティ・スクールといって、生徒、教員、保護者、地域が一体となって学校を運営する仕組みがある。保護者や地域の経験や知恵が学校に活かされ、教員や保護者の意識が変わり、生徒にいい影響を与える。多様な価値観にふれることができ、「生きる力」を育む。学校が地域コミュニティの中心となり世代間交流はもちろん、地域の大人同士の交流の機会をつくり、新しい地域のプロジェクトが生まれるきっかけにもなる。さらにその結果として治安もよくなる。教育が生活に根ざすことで地域の力になるのだ。

柏まちなかカレッジ学長  山下 洋輔

 

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投稿者:

山下 洋輔

柏市議会議員。柏まちなかカレッジ学長。元高校教諭。2児の父。 教育学研究や地域活動から、教育は、学校だけの課題ではなく、家庭・地域・社会と学校が支え合うべきものと考え、「教育のまち」を目指し活動。著書『地域の力を引き出す学びの方程式』 (社)305Basketball監事。 千葉県立東葛飾高校卒業。早稲田大学教育学部卒。 早稲田大学大学院教育学研究科修士課程修了後、土浦日大高校にて高校教諭。早稲田大学教育学研究科後期博士課程単位取得後退学。 教育コンサルタント山下洋輔事務所設立。 2011年9月から柏市議会議員。 家族 妻、長男(2014年生まれ)、長女(2017年生まれ)