ヤマシィトンポスト

こども哲学のすすめ

以下、『BE-COM2月号 vol.267』 (2015.2.1 BE・COMときわ通信発行)に掲載より引用

【こどもは哲学的】
70年前の11月22日、手賀沼で多くの若い女性教員がお亡くなりになった。研修のために、船で手賀沼を渡ろうとした時に、突風のために船が転覆してしまった。当時は、戦時中。男性教員は少なく、まだ10代、20代の女性教員が学校現場を支えていたのであった。
昨年の11月22日に開催された慰霊式にて、遺族の方のお話をお聴きした。父親が戦死し、母親も事故で失った。事故そのものの悲惨さだけでなく、その後の生活の大変さが伝わってきた。戦争は、多くの人びとの人生を変えてしまった。二度とあってはならないと思った。1526521_1012612172088187_8675164599278789893_n 小学生のこどもの感想のようになってしまった。しかし、かえって、こどもの方が真剣に考えていることもある。そういえば、私も、こどもの頃には、学校の先生や親の話やテレビから、環境問題や財政が、このままではいけないと危機を覚え、居ても立ってもいられなくなったことを思い出す。
また、こどもの素朴な疑問は、本質的な問題を指摘している場合もある。大人になるにつれ、現実との兼ね合いの中で、見て見ぬふりをしていたり、疑問を感じなくなってしまう。
フランスの経済的に恵まれない地域での幼稚園のこどもが、哲学的な対話を繰り広げるドキュメンタリー映画『ちいさな哲学者』が話題になった。いま、こどもが哲学的に対話する実践が注目されている。

【こども哲学とは】IMG_2597 これからの社会は、これまで以上に変化が激しくなると予想される。小学校で覚えた知識は大人になったら役立たない場合もあり得る。知識ではなく、学び方や考える力を身につけることが大切になる。
社会課題は複雑になり、一つの組織だけでは解決できなくなる。たとえば、環境問題は、国や世代を超えた対話や消費者のライフスタイルの見直しが必要となる。組織や立場を超えた対話が求められる。
社会は、ますます多様になる。他者を認め合い、様々な価値観が存在するのは、持続可能な社会の実現につながる。そのためにも、対話が必要となる。
そこで、これからの教育として注目されているのが、こども哲学である。IMG_9387 こども哲学とは、対話によって、こどもが考えを深めていく活動である。大人が答えを教えるのではなく、子どもたちで問いを立て、それぞれの経験をもとに話し合う。情報の更新が激しくなり、知識を得ることより、適切な問いを立て、他者と協働する力を身につけることができる。
哲学というと、専門家が難しそうに言葉遊びをしているイメージがあるかもしれない。本来、哲学は、私たちが生きる上で大切な様々な問題を深く考えるものだ。こども哲学は、誰もに開かれた、具体的な生活の中にあるテーマを取り上げ、いろいろな人と話し合うものである。
こども哲学は一九二〇年代にドイツで芽生え、一九七〇年代にアメリカの哲学者M.リップマンによって唱えられた哲学の教育方法だ。
こども哲学によって、①批判的思考、②創造的思考、③気遣い、思いやるケア的思考の三つの思考力が身につけられる。

【探求の共同体を育てる】10365626_1020233167992754_4754143698299582440_o 私は、ネクスファという民間の学童保育で、子ども哲学の実践であるストーリーテリングという教育プログラムを毎月実施している。人前でしっかりと自分の意見を発表できるようになることを目標としている。そのためには、人の話を聴く姿勢がなくてはならない。人の話を聴く時にはおしゃべりし、人前で発表する時にはモジモジと黙ってしまう。聞き手は自分の意見を受け止めてくれるという安心感のある話し合いの場となるよう心掛けている。
これまで、「ルール」、「嘘をつくこと」、「動物の権利」、「環境問題と100年後のための思いやり」、「理想の学校」についてのテーマを話し合ってきた。
子どもの哲学は、1人で取り組むわけではない。それぞれの経験をもとに、話を深め合う。この過程から探求の共同体が育ってきている。

【民主的な市民を育成する教育】
子ども哲学は、公民教育やシチズンシップとも呼ばれる市民を育成する教育にもつながる。自分たちの生き方やこれからの社会のあり方を真剣に考え、異なる意見も受け入れ対話を進める。自ら問いを立て、自分の意見を主張する。子ども哲学は、民主主義の土壌を耕す活動でもある。

柏まちなかカレッジ学長  山下 洋輔

投稿者:

山下 洋輔

千葉県議会議員(柏市選出)。 元高校教諭。理想の学校を設立したいと大学院に進学。教員経験、教育学研究や地域活動から、教育は、学校だけの課題ではなく、家庭・地域・社会と学校が支え合うべきものと考え、「教育のまち」を目指し活動。著書『地域の力を引き出す学びの方程式』 2011年から柏市議会議員を3期10年を経て、柏市長選に挑戦(43,834票)。落選後の2年間、シリコンバレーのベンチャー企業Fractaの政策企画部長として公民連携によってAIで水道管を救う仕事を経験。 柏まちなかカレッジ学長/(社)305Basketball監事。 千葉県立東葛飾高校卒業。早稲田大学教育学部卒。 早稲田大学大学院教育学研究科修士課程修了後、土浦日大高校にて高校教諭。早稲田大学教育学研究科後期博士課程単位取得後退学。 家族 妻、長男(2014年生まれ)、長女(2017年生まれ)