ヤマシィトンポスト

子どもが一人で作る「弁当の日」

以下、『BE-COM 2月号 vol.232』 (2012.2.1 BE・COMときわ通信発行)に掲載より引用子どもが一人で作る「弁当の日」

【「弁当の日」とは】

今回、ご紹介する話は、おそらく賛否両論あると予想される。ただ、誤解に過ぎない部分も多いので、ここできちんと説明しておきたい。賛否両論があるということは、それだけ関心の高いテーマでもある。これをきっかけに、より良い教育への話合いが進めばと願う。

「弁当の日」とは、子どもだけで、自分で作るというのがルール。献立作りから買い出し、調理、片づけ、箱詰めまで、全部子ども自身がやる。親が子供に弁当を持たせる日ではない。年間実施回数、実施規模(全校、学年、クラス単位)を問わない。ただ、学校の授業として調理室で弁当を作らせたというのはダメ。早朝に子どもが自宅の台所に一人で立つことに大きな意味があると考えている。

「本当に自分で作ったか」は、確認しない。子どもが作りたがっていても、親が手を出すこともある。でも、それを調べる必要はない。本当に自分でご飯を炊いたか、おかずを作ったかは、会話や態度を通して分かるもの。自分で作らなかったことを悔しく思う生徒も出てくる。そして、「次は自分で作ろう」と決心するという。

インターネット上の「ひろがれ弁当の日」によると、「弁当の日」は、平成23年12月22日現在で、47都道府県 808校が取り組んでいる。この取り組みは2001年、香川県綾川町立滝宮小学校の竹下和男校長(2009年度退職)の取り組みから始まった。この柏でも、実現させたいと取り組まれている親や教員も出てきている。

 

 

【「弁当の日」反対運動】

子どもが弁当を作ることに対して、親や教員からの反対は多かったそうだ。埼玉県鷲宮町議会(現久喜市議会)が、学校給食に弁当の日を設けることについて定めたとき、反対運動も起こっている。

この「弁当の日」を、知り合いに話したところ、賛同の声の一方で、以下のような反応があった。「共働きの家庭が多い中、母親の負担が増えるのはどうかと思う」「危ないからガス栓や包丁を触らせたことがない」「早起きできるはずがない」「慌ただしい時間帯に台所を占領されるなんてとんでもない」「料理は、家庭科で学んでほしいし」「時間の融通がきく夜や週末のご飯作りをしてもらうほうかいい」。「弁当の日」は、「給食を否定しているのでは?」という質問も出た。さらには、「親が料理を作らない家庭もある。『弁当の日』をやるとかわいそう」という声もあった。

 

【反対の声は、現代社会の課題】

このような反対の声にこそ、「弁当の日」が必要な理由が存在する。

「親の負担が増える」というが、子どもだけで作るというのがルール。子どもが自立し、ゆくゆくは親を助けることになる。親への感謝の気持ちも深まる。「子どもたちはやりたがっているし、やらせればできる。それを大人がわかっていなかったんだと気づかされました」という母親の声。子どもの力を信じ、見守る大切さに気付くきっかけにもなっている。

「時間がない」という理由で、家族の団らんが失われてきた現実がある。これは、子どもの成長にも影響を与えていると考えられている。親の働き方も含めた社会の課題でもある。「弁当の日」は、そんな課題解決に対する具体的な提案でもあるのだ。

「危ない」と言って、大人が子どもを危険から遠ざけてきた現実がある。失敗は責められ、再挑戦を奪ってきた反省もある。

「給食を否定」というのも、真意は逆。給食の食材の管理や搬送、献立や調理などの段階で工夫や努力に気づいてもらい、給食に感謝する気持ちを育みたいという思いから始まったのだ。

「料理をしない親の子どもが、かわいそう」といった心配が、教員や親からも出る。これに対して、竹下氏は「かわいそうな状況があるなら、それをそのまま放っておく方がかわいそうだ。親ができないなら子ども自身ができるようにしてやればいい。それは一生の財産になるし、助かるのは親の方でしょう」と語っている。

柏まちなかカレッジ学長  山下 洋輔

 

投稿者:

山下 洋輔

千葉県議会議員(柏市選出)。 元高校教諭。理想の学校を設立したいと大学院に進学。教員経験、教育学研究や地域活動から、教育は、学校だけの課題ではなく、家庭・地域・社会と学校が支え合うべきものと考え、「教育のまち」を目指し活動。著書『地域の力を引き出す学びの方程式』 2011年から柏市議会議員を3期10年を経て、柏市長選に挑戦(43,834票)。落選後の2年間、シリコンバレーのベンチャー企業Fractaの政策企画部長として公民連携によってAIで水道管を救う仕事を経験。 柏まちなかカレッジ学長/(社)305Basketball監事。 千葉県立東葛飾高校卒業。早稲田大学教育学部卒。 早稲田大学大学院教育学研究科修士課程修了後、土浦日大高校にて高校教諭。早稲田大学教育学研究科後期博士課程単位取得後退学。 家族 妻、長男(2014年生まれ)、長女(2017年生まれ)