以下、『BE-COM 7月号 vol.237』 (2012.7.1 BE・COMときわ通信発行)に掲載より引用
食でつながる社会
【食育の実践】
東京都港区青山小学校では、レストランの料理長が持ち込みの企画で、校舎屋上の畑で農作業し、児童が収穫した野菜を料理したり、野菜を販売したりしながら、経営的な視点も学んでいるという。一方で、子どもの発想から、新しいアイデアが生まれている。
この実践では、レストラン経営者、教員、児童、保護者・家庭、地域の商店、農家などの連携がみられる。食を通して、社会がつながっていることを実感できる取り組みである。
さて、柏市でも、様々な立場から、食育の取り組もうとしている。柏には、多様な食育の役者がそろっており、食育の先進地域になる可能性を感じる。それぞれが、連携し、協力していけば、素晴らしいことになる。
【地域の未来に働きかける】
食は、誰もが関係するテーマである。
そんな食を通して、未来に、地域に働きかけたい。食べ物・農業・流通・飲食・ライフスタイルなどを含めた食から、感謝や、人と人とのつながりを実感できるようなムーブメントが起こせないだろうか。一つのきっかけを投げかけよう
そこで、私は、フューチャーセンターの手法を使うことにした。フューチャーセンターとは、従来の枠組みでは行き詰ってしまっている複雑な課題について、組織や立場を超えて対話を開き、理解の共有や意思決定をはかり、解決に向けた実践をおこす場である。オランダやデンマークでは、官公庁でも活用されている。柏で、食に関わる人が、一堂に会せば、新しいアイデアが生まれ、「一緒にやっていこう」という動きのきっかけになると考えたのだ。
【第一歩を踏み出す】
6月2日に「食でつながる社会」をテーマにフューチャーセンターのセッションを開催した。農家、飲食店経営者、料理人、スーパー経営者、教員、PTA役員、食品メーカー社員、経営コンサルタント、社労士、鳥博士、まちづくりコーディネーター、食のブランドイメージを促進する仕事や高齢者のコミュニティづくりに関わる方、新規就農者などなど、地元に密着した参加者が集まった。
会場は、倉庫を改造して利用されているアートギャラリー。会議室らしくない場所でだからこそ、新鮮なアイデアが生まれるという狙いである。
最初に、参加者が、1名前、2職業・活動、3参加目的、4興味あるクロスポイント「食と○○」を書き、5人程度のグループで自己紹介。
次に、食でつながる社会を目指し、働きかけをおこしてきたMさんの話を聴いた。Mさん自身、かつては、マクロビや、有機無農薬野菜を使うことで安心してしまっていた。スーパーで「顔の見える野菜」を買っても、顔写真がついている野菜を買っているに過ぎなかった。柏に転勤で住み、変わった。人と人とのつながりを感じられるようになった。地域への愛着が大切だと実感した。食、農、環境とのかかわりに気づき、みんなに知ってもらいたい。生産者である農家と飲食や流通も含めた消費者をつないでいく活動を始めた。料理教室やお菓子製作、柏の野菜を使ったレシピ開発、ホンモノを飲食店に紹介するなど行ってきた。これからは、やはり教育が大切と考え、食育に取り組んでいきたい。
Mさんのお話を受け、参加者から以下のテーマがあがってきた。 「学食食堂の再生」
「柏と農業」 、「食と企業」 、「顧客はだれか」 、「食のブランディング」 など。
5つテーマがでてきたところで、それぞれのグループに分かれて「コラージュワークショップ」を行った。これは、雑誌を切り抜き、編集し、イメージを形にするものである。やり方について、参加者は不安の気持ちを持っていたが、 始まってみると、チームワークを発揮し、どんどん新しい発想が生まれてきた。 新しく生み出すこと、古いものを壊すこと。これらは、力があればできるかもしれない。しかし、現実は、限られた時間で、その時にある資源を活用し、編み出していくものではないだろうか。
最後に、振り返りを行い、 自分の中に起こった変化を確認。これから自分でできることを宣言した。
閉塞した社会では、何をやっても無力さを感じるかもしれない。しかし、小さな力でも、同じ思いを持つ人が集まれば、社会を変えられるかもしれない。そんな希望が連鎖し、本当に社会を変えていく。思いを発信する場、思いがつながっていく場を、これからも創造していきたい。
柏まちなかカレッジ学長 山下洋輔