地域に生きた作家、杉浦明平

先日、ホタルの観察にお誘い頂いた小川幸夫さんから、蜂についてご講演されたお話をお聞きしました。本当に興味深い内容です。

ホタルの観察と環境保全の課題

自然科学としてだけでなく、政治経済に関わる社会問題でもあります。

前々から蜂のお話をお聞きする度に思い出す作家がいます。杉浦明平さん(1913-2001)といって、愛知県渥美半島で生活しながら、政治と文学の活動をされました。
『養蜂記』という作品があり、そろそろちゃんと読んでみたいと探していたところ、先に『夜逃げ町長』という本を入手しました。

今では公職選挙法も厳しくなり、この本のような内容はあり得ないわけですが、ほんの数十年前にはリアルに存在していた話だと分かります。
飲酒運転や路上喫煙が、昔はあったと思い出されるのと似た感じです。

国会の汚職事件と違い、地方で起きたことは、人々の噂や記憶には強烈でも、記録としては小さい扱いだったりするものです。
捕まった人の罪状がすべてを表している訳ではなく、さまざまな不正もあったかもしれませんし、その当時の状況というものは、はっきりと記録されているとは言えません。

この杉浦明平の文章は、人間洞察が素晴らしいです。「こんな人物、うちの地元にもいそう」と読者を引き込み、馬鹿にしたり、悪い奴だと腹を立てたりしながら、読後には哀愁を覚え、人間の弱さや時代の流れを考えてしまう。

政治事件や戦争でなく、人々の日常的な生活や考えるところを読み取ろうとした歴史研究に、私は学生時代から影響を受けてきました。
まさに杉浦明平の文章は、その時代の心性を表すものと感じます。

時代の変化は激しいので、今、杉浦明平のような作家が必要です。

地域に根を張って活動している同志が全国に沢山いますが、そういった人たちこそ、自分たちの地域での出来事を文章にして発信していくことも大切と思います。
忙しい人たちこそ、その中身に価値もあると思うので、頑張って書いて欲しいです。

投稿者:

山下 洋輔

千葉県議会議員(柏市選出)。 元高校教諭。理想の学校を設立したいと大学院に進学。教員経験、教育学研究や地域活動から、教育は、学校だけの課題ではなく、家庭・地域・社会と学校が支え合うべきものと考え、「教育のまち」を目指し活動。著書『地域の力を引き出す学びの方程式』 2011年から柏市議会議員を3期10年を経て、柏市長選に挑戦(43,834票)。落選後の2年間、シリコンバレーのベンチャー企業Fractaの政策企画部長として公民連携によってAIで水道管を救う仕事を経験。 柏まちなかカレッジ学長/(社)305Basketball監事。 千葉県立東葛飾高校卒業。早稲田大学教育学部卒。 早稲田大学大学院教育学研究科修士課程修了後、土浦日大高校にて高校教諭。早稲田大学教育学研究科後期博士課程単位取得後退学。 家族 妻、長男(2014年生まれ)、長女(2017年生まれ)