先日、ホタルの観察にお誘い頂いた小川幸夫さんから、蜂についてご講演されたお話をお聞きしました。本当に興味深い内容です。
自然科学としてだけでなく、政治経済に関わる社会問題でもあります。
前々から蜂のお話をお聞きする度に思い出す作家がいます。杉浦明平さん(1913-2001)といって、愛知県渥美半島で生活しながら、政治と文学の活動をされました。
『養蜂記』という作品があり、そろそろちゃんと読んでみたいと探していたところ、先に『夜逃げ町長』という本を入手しました。
今では公職選挙法も厳しくなり、この本のような内容はあり得ないわけですが、ほんの数十年前にはリアルに存在していた話だと分かります。
飲酒運転や路上喫煙が、昔はあったと思い出されるのと似た感じです。
国会の汚職事件と違い、地方で起きたことは、人々の噂や記憶には強烈でも、記録としては小さい扱いだったりするものです。
捕まった人の罪状がすべてを表している訳ではなく、さまざまな不正もあったかもしれませんし、その当時の状況というものは、はっきりと記録されているとは言えません。
この杉浦明平の文章は、人間洞察が素晴らしいです。「こんな人物、うちの地元にもいそう」と読者を引き込み、馬鹿にしたり、悪い奴だと腹を立てたりしながら、読後には哀愁を覚え、人間の弱さや時代の流れを考えてしまう。
政治事件や戦争でなく、人々の日常的な生活や考えるところを読み取ろうとした歴史研究に、私は学生時代から影響を受けてきました。
まさに杉浦明平の文章は、その時代の心性を表すものと感じます。
時代の変化は激しいので、今、杉浦明平のような作家が必要です。
地域に根を張って活動している同志が全国に沢山いますが、そういった人たちこそ、自分たちの地域での出来事を文章にして発信していくことも大切と思います。
忙しい人たちこそ、その中身に価値もあると思うので、頑張って書いて欲しいです。