デレク•ユアン著『真説 孫子』(中央公論新社)を読みました。
著者は香港出身で、イギリスで研究し、本書の内容はアメリカ軍やオーストラリア軍でも読まれているとのこと。
日本でも孫子の兵法は、ビジネス書として多く出版されていますが、本来意図されていた「国家戦略」として出されている本はわずかです。
孫子 (講談社学術文庫)
一方、いわゆる「西洋」での孫子研究では、東洋思想の系譜やタオイズムとの関わりが抜け落ちてしまっていると指摘されています。
本書は、孫子兵法とタオイズムの相互関連を検証したことに意義があります。
・孫子は老子の影響を受けている。
・老子の弟子たちにより編纂されたタオイズムの正典である『道徳経』よりも前に、『孫子兵法』は成立している。
・この事実から、中国の思想における『孫子兵法』の重要度は高まった。
・つまり、『孫子兵法』は、中国の戦略思想、政治思想、中国の弁証法、法家思想(現実主義)にも影響を与えていると言える。
老子 (講談社学術文庫)
この著者デレク•ユアンが、日本版の謝辞にて、日本の戦略思想家として柳生宗矩をあげ、柳生宗矩が書いた『兵法家伝書』からインスピレーションを得ていると語っています。
この「兵法家伝書」は、禅や能の思想とつながっています。
日本の武道、禅や能、老子、そして孫子の兵法へ。
今年度に入って、武道の稽古を再開し、頭だけでなく身体全体で理解を深めていきたいと思います。