フィンランドのいじめ防止プログラムに注目しています。
プログラム開発者であるChristina Salmivali教授のインタビューを紹介致します。
2012年11月16日(金曜日)読売17面 No.1693
教育ルネサンス いじめと向き合う 17
統一プログラムで効果
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20121116-OYT8T00543.htm
フィンランド・トゥルク大学 クリスティナ・サルミバリ教授に聞く
学力の高さとともに、いじめ対策先進国としても知られるフィンランド。2009年から統一的ないじめ防止プログラム「KiVa」が小中学校で導入され、効果を上げている。
プログラムの開発者で、10月上旬に鳴門教育大学の招きで来日したトゥルク大学のクリスティナ・サルミバリ教授(45)に話を聞いた。
――フィンランドではいつ頃からいじめが問題になったのか。
「私自身は約25年前からいじめのメカニズムなどを研究してきた。1990年代初めに、いじめに関する悲惨な事件や自殺などが相次ぎ、メディアが大きく取り上げたこともあって社会の注目を集めるようになった」
――政府はどんな対策を。
「99年に学校の安全確保に関する法が制定され、03年の法改正で各学校にいじめ対策の行動計画策定が義務づけられた。だが、学校ごとにプログラムを作ると時間がかかり、効果があるかどうかもわからないので、06年に政府の依頼を受けてKiVaの開発を始めた。09年から全国の小中学校で導入が始まり、現在、9割の学校で採用されている」
――効果はどうか。
「導入してから9か月後のいじめ被害の報告件数は、導入していない学校に比べて2割前後低かった。生徒の不安感、抑うつ傾向も低く、逆に学校への愛着や学業意欲は高かった。以前は『うちの学校にはいじめはない』と話す校長が多かったのが、『いじめはある。こういう対応をとっている』と報告するようになるなど、意識の改革もあった」
――日本のいじめ対策の現状をどう見ているか。
「私たちがいじめ研究を始めた当時、参考文献は北欧以外では日本くらいしかなく、早くからいじめに取り組んでいる印象がある。ピア・サポート(仲間による支え)など良いプログラムもあると聞いているが、誰でも利用できる統一的なプログラムもあるといいと思う」(聞き手・木村達矢、写真も)
Christina Salmivalli 1998年、トゥルク大学で博士号。2004年から同大教授。いじめとその予防策について研究を続けている。専門は心理学。
KiVa いじめについて学ぶ授業「KiVaレッスン」と、コンピューターゲーム形式の「KiVaゲーム」がある。日本の小1、小4、中1に当たる学年向けに3種類ある。
「レッスン」は、90分の授業を月1回、年10回行うのが基本。仲間意識からくる心理的圧力や尊敬の念などの感情について学び、いじめ防止に各自がどう行動すればいいかを考える。合間に行う「ゲーム」では、いじめ発生時の対処法、特に「傍観者」にならない方法を、楽しみながら練習する。