高齢者等終身サポート事業について、柏市議会で永山ともひと議員が質問

身寄りのない高齢者が、2050年には448万人となる見込みであることが、日本総合研究所の試算が示されれました。高齢者の9人に1人の割合です。
老後の施設入居や入院の身元保証人や遺体の引き取り手ないない人が増えることが予想されます。
身寄りのない高齢者を支援する民間サービスの利用が広がってきている一方で、トラブルも増えてきていました。そこで、政府は、今年6月にガイドラインを作成し、一部の自治体では優良事業者の認証制度なども始まり、制度が整いつつあり、今後、ますます必要な事業と言えます。
柏市議会で、永山ともひと議員が質問されていますので、ご紹介いたします。

【千葉県議会】高齢者にやさしいまちに~ ひとり暮らしでも安心な高齢者終身サポート事業を質問

R6年第4回定例会 R6.12.5 永山ともひと議員一般質問

永山ともひと議員 質問

項目1、高齢者福祉について。
まずこの項目の冒頭で少し触れさせて頂きたいことがあります。また衆院選の話になってしまい恐縮ですが、今回の選挙においても、「社会保障、特に高齢者の介護や福祉サービスにお金を使いすぎている」といった主張が聞かれました。
では、高齢者の社会保障を削るとどうなるか。
その負担は家族、すなわち現役世代にしわ寄せが行きます。今年2月9日に財務省が発表した2024年度の国民負担率の見通しは45.1%、うち社会保障負担は18.4%となっており、確かに負担が重いことは見て取れますが、だからと言って社会保障負担を軽減すればその分を自身の自由な消費に使えるかと言ったらそうではないと思います。給付を削られてしまった親御さんを支えていかなければなりません。
社会保障の原則は、支え合い・助け合いです。社会全体で負担を分かち合うセーフティネットが社会保障だと思います。

この考えをまずは共有させていただきたいのですが、国立社会保障・人口問題研究所が11月12日に発表した「日本の世帯数の将来推計」によれば、2050年、千葉県の平均世帯人員、すなわち1世帯に何人の方が住んでいるかの値は、1.93人です。
全世帯に占める75歳以上の世帯は27.7%、75歳以上人口に占める一人暮らしは29.0%と推計されています。東京の事例ではありますが、2022年、東京23区内で「異状死」と呼ばれる法医解剖が必要な状態で見つかった方のうち、約7割が65歳以上であったと東京都監察医務院が集計しています。一人暮らしでの「異状死」に至っては、2021年の7544人から2022年の8762人と増加傾向にあります。大変悲しいことではありますが、たとえ結婚をしてお子さんが産まれても、子どもは独立し、夫婦のどちらかが先に旅立たれ、最後は一人になります。

一人暮らしの高齢者を支える医療・介護サービスを引き続き維持・拡充していくことも勿論重要ですが、それと同時に、身寄りのない一人暮らしの方のサポートや「身元保証」を行う体制の構築も必要になっていきます。
たとえば施設や賃貸住宅に入居する際は保証人が必要となり、手術などの医療サービスを受ける際も同意が必要、さらにはその方が亡くなった後の死後事務などの問題もあります。
昨今では、こうしたニーズに対応する高齢者等終身サポート事業(身元保証高齢者サポート事業)を展開する民間事業者数も増加していますが、それと同時にトラブルも増加しています。
特に死後事務、役所への届け出や葬儀の手配、各種契約の解除や遺品整理などは契約者本人がなくなっているために、死後事務が適正に行われているか確認するすべがなく、問題が発生しやすい項目です。
わが国においては「成年後見制度」が存在し、認知症、知的障害、精神障害などの事情で財産管理や契約の締結が難しい方について、後見人が本人に成り代わって権限を持つ仕組みがありますが、「身元保証」は似て非なるものであり、本人や後見人でない人、一般的にこれまではご家族が保証人となる前提であった、日常生活の支援などを、家族に代わって身元を保証する制度です。

静岡市では、サービス提供事業者の質の保証に行政が関与することが必要であると判断し、2023年度から「終活支援優良事業者認証事業」を開始しています。3項目の基準、①組織運営、②契約の締結・履行、③サービスの管理、この3つを満たしている事業者を「終活支援優良事業者」として3年間の認証を与えるものです。そこで伺います。身内による手助けや監護を前提とするいわば家族ありきの社会システムは限界を迎えています。

身寄りのない高齢者など、単身世帯が増えていく中、孤独・孤立対策に柏市としてどのように取り組んでいくのか、また、静岡市が実施している高齢者等終身サポート事業の認証制度についてどのようにお考えか、ご答弁をお願いします。

吉田健康医療部長 答弁

「高齢者等終身サポート事業」についてお答えいたします。

身寄りのない,また,家族がいても身近に頼れる人がいない状況にある高齢者の方の
・医療機関への入退院や施設への入退所など手続き支援
・日用品の買い物などの日常生活支援
・葬儀や死後の財産処分などの死後事務
等のサービスを行う「高齢者等終身サポート事業」を行う民間事業者が増加しております。

一方,当該サービスにおいては,
・死後事務を含むサービスであることから契約が長期に渡ること,
・サービス提供に先行して一部費用が前払いされるため契約内容の適正な履行が確認しにくいこと,
・契約者の意思能力の有無をめぐって事後的に争いが生じやすいこと,
などが課題となっております。

この解決のため,国は本年6月に,事業者向けのガイドラインを示したところです。
また,議員ご紹介のとおり,当該事業を行う事業者の適正な事業運営を確保する「身元保証事業者認定制度」を先駆的に行っている自治体もあることから,現在は調査研究を行っている段階です。

一方,国は,十分な資力がないなど,民間の支援を受けられない方を対象としたモデル事業を試行的に実施し,課題の検証を行っているところです。
この事業は,
・包括的な相談・調整窓口の整備
・総合的な支援パッケージを提供する取組
の2つを市町村が行うというものです。

市の取り組みの現状としましては,柏市社会福祉協議会に設置されております「かしわ福祉権利擁護センター」がその一部を行っております。

具体的には,「包括的な相談・調整」の一環として,「わたしの望みノート」の無料配布と作成支援を通じた意思決定支援に取り組んでおります。

また,必要なかたには「日常生活自立支援事業」をご利用いただき,財産管理,保全を行っております。

これらの事業は,「市民後見人養成講座」を終了した方に活動を行っていただくことで,将来的な成年後見制度の利用促進にもつながることを目指して取り組んでおります。

現時点では,国のモデル事業で示している「支援プランの交付」や「死後事務支援」は行っておらず,総合的なパッケージとはなっておりませんので,引き続き,国や先進市の動向を注視し,安心して年を重ねることができる仕組み作りについて検討してまいります。

2問目
柏市の基本的な方針としては、モデル事業を展開している先進自治体の事例を参考にしながら取り組んでいくというものでした。
なかなか前向きな答えは得られなかったものの、成年後見とは違う仕組みとして着目はしていることはうかがえました。

投稿者:

山下 洋輔

千葉県議会議員(柏市選出)。 元高校教諭。理想の学校を設立したいと大学院に進学。教員経験、教育学研究や地域活動から、教育は、学校だけの課題ではなく、家庭・地域・社会と学校が支え合うべきものと考え、「教育のまち」を目指し活動。著書『地域の力を引き出す学びの方程式』 2011年から柏市議会議員を3期10年を経て、柏市長選に挑戦(43,834票)。落選後の2年間、シリコンバレーのベンチャー企業Fractaの政策企画部長として公民連携によってAIで水道管を救う仕事を経験。 柏まちなかカレッジ学長/(社)305Basketball監事。 千葉県立東葛飾高校卒業。早稲田大学教育学部卒。 早稲田大学大学院教育学研究科修士課程修了後、土浦日大高校にて高校教諭。早稲田大学教育学研究科後期博士課程単位取得後退学。 家族 妻、長男(2014年生まれ)、長女(2017年生まれ)