ごみ問題はカラスのせいではなく、人間社会の課題

ごみステーションの設置と管理は、町会に任されていますが、町会加入率の低下や生活スタイルの変化、高齢化など、各地で大きな課題となっています。(※ごみステーション=ごみ集積書、ごみ置き場)
今日は、それぞれの町会の課題や取り組みなどを共有し、それぞれの町会が抱える課題への解決策やヒントが得られるような機会にしていきたいと、柏中央地域ふるさと協議会の環境部長として、「ごみステーション」についての研修会を企画しました。

話し合いでは、さまざまな事例が出ました。

既存のごみ置き場が、相続など地権者の事情で廃止され、周辺住民のごみの行き場がなくなる。建て売り住宅となり、その住宅専用のゴミ置き場とな理、ごみ置き場の新設が難しく、他のごみ置き場のグループにも入りにくいといった声。

通勤通学者が通り道に捨てるごみ、街に来た人が夜に散らかすごみ、道路にあったごみステーションが周辺環境の変化で使えなくなったこと、地権者としてのお困りごとなど、駅前ならではの課題もありました。

市民がごみ集積所を設置し、相互協力のもと管理するというやり方は、地域社会における住民相互のつながりを前提とした、日本独特のシステムといえます。しかし今後さらに高齢化や地域コミュニティの弱体化が進んでいけば、個別回収といった動きも出てきます。

柏市によるごみだし支援を受けるための基準が厳しいという声もあり、
支援対象についてはケアマネや民生委員とも話し合いながら、個別に支援を検討していきたいと、柏市の担当職員からの話もありました。

大きく3つも課題・対策があります。
1 ごみステーションの規模と設備
⇨大規模なステーションを分散させ、近くに、小さなステーションを新設
⇨ボックスやネットなどを整備。きれいな状態を保つ。
2 マナーと住民対応
⇨町会未加入者対応
⇨分別困難者対応(外国籍、認知症、高齢者等)
⇨ごみ出し困難者対応(高齢者や障がい者等)
3 地域コミュニティ

つまるところ、高齢化や地域コミュニティの弱体化等の問題です。
この状況を直視し、対応して行くための新たな社会システムの構築も提案していきます。

これまで清掃工場やリサイクル施設、水道や下水道施設などを現地視察して学んできましたが、今年度はバス移動をせず、ワークショップ形式でした。
11町会から16名が集まり、市役所の担当課からもご参加いただきました。
今日の話し合いだけで、問題が解決するわけではありませんが、課題を整理し、経験を共有し、行政や近隣町会とも連携できるきっかけとして、意義ある時間だっったと考えます。

国立研究開発法人国立環境研究所「高齢化・地域コミュニティの弱体化に対応するごみ集積所管理支援の事例集」より
https://www-cycle.nies.go.jp/jp/report/aging4.pdf

ごみ集積所の集約を支援する取組
栃木県鹿沼市は、既存のごみ集積所を2カ所以上集約して整備する自治会に対して経費の1/2を補助。岩手県釜石市は戸別収集を行っているエリアでごみ集積所を設置する、もしくは複数のごみ集積所を1か所に集約する自治会に対し、おおむね10世帯以上が利用するという条件をつけて設備購入の経費の1/2を補助しています。また、三重県亀山市は、複数の既設のごみ集積所を統合し、 新たにごみ集積所を1つ設置する場合には、統合したごみ集積所の数に応じて補助金の額を加算するという施策をとっています。

ごみの重量を減らす -高齢世帯向けに生ごみ処理機の購入を補助-富山県立山町

分別ができなくなった人に配慮する -《分別ご免除シール》の交付-熊本県水俣市

いつでもごみを出せるようにする -《ハンディキャップボックス・シール》を活用し、ごみ出しルールを緩和する取組-東京都日野市

ごみ集積所内でのごみの混在を解消する -ごみ種類によってごみ集積所を分けてごみの混在を解消する取組-三重県四日市市

生ごみを24時間出せる回収箱の導入 -生ごみ回収箱による試験運用の実施-市川市

ごみの運搬距離を短くする -少数世帯でのごみ集積所設置許可-長崎県諫早市

町独自の開閉補助装置 -少しの力で扉が開く。ごみ集積所設備の扉に補助器具を取り付ける取組-三重県大紀町

軽いアルミ製の設備の補助率を高くする -高齢者が扱いやすいごみ収集箱の設置に高い補助率を設定して普及を促す取組-富山県立山町

これだけでカラスがこない? カラス除けコンテナ貸与 -ごみ集積所にカラス除けコンテナを設置する事例-愛知県豊橋市

密閉性の高いごみ集積所の導入推進・補助 -ごみの飛散を防ぐダストボックスの導入を推進する事例-茨城県つくば市

地域の問題に対応した普及看板・ポスターの作成 -ごみ集積所の維持管理のための啓発看板の配布-愛知県豊橋市

自治体職員が住民と直接つながって普及啓発 -《集積場所快善(改善)隊》の取組-神奈川県横浜市

ごみ集積所管理の冊子を作成する -《ごみステーション管理者の手引き》の作成、配布-栃木県鹿沼市

投棄された廃家電製品の処理費を補助する -特定家電用機器廃棄物(テレビ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機)の処理費用の交付-山口県山口市

日常の『ごみ出し』を活用した 地域コミュニティ向上モデル事業 -『ごみ出し』を切り口としたコミュニティ拠点「こみすて」の事例-萩の台住宅地(アミタ株式会社)

 

投稿者:

山下 洋輔

千葉県議会議員(柏市選出)。 元高校教諭。理想の学校を設立したいと大学院に進学。教員経験、教育学研究や地域活動から、教育は、学校だけの課題ではなく、家庭・地域・社会と学校が支え合うべきものと考え、「教育のまち」を目指し活動。著書『地域の力を引き出す学びの方程式』 2011年から柏市議会議員を3期10年を経て、柏市長選に挑戦(43,834票)。落選後の2年間、シリコンバレーのベンチャー企業Fractaの政策企画部長として公民連携によってAIで水道管を救う仕事を経験。 柏まちなかカレッジ学長/(社)305Basketball監事。 千葉県立東葛飾高校卒業。早稲田大学教育学部卒。 早稲田大学大学院教育学研究科修士課程修了後、土浦日大高校にて高校教諭。早稲田大学教育学研究科後期博士課程単位取得後退学。 家族 妻、長男(2014年生まれ)、長女(2017年生まれ)