日本人と馬の文化史

この本は、馬をテーマとしながら、東アジアでの日本人の心性の特質やアイデンティティの究明を目指して書かれた力作です。

紀元前3000年以前の馬の家畜化の話から始まり、日本の高度成長期による生活の変化、バブル崩壊後の地域社会の変容などまで、壮大なスケールで展開されています。

時間的空間的に大きな視点で考えるからこそ、見えてくる歴史や文化があります。読む人の興味関心によって、見えてくるものも違うと思いますが、一人ひとりの興味関心に応えてくれる本です。全ページ全力投球で書かれているように感じます。

筆者の推測を、評論家のように論じることなく、先行研究を踏まえて、丁寧に、緻密に説明が繰り広げられています。

大学時代、歴史学の授業で、アナール学派の心性史について知り、リュシアン•フェーブルやマルク•ブロックらの本を読んだことを懐かしく思いながら、この本のページをめくりました。
ただ、苦労して読んだフェーブルらの本と違い、この本は、身近なテーマで、現代社会の課題も示唆しており、内容がスッと入ってきました。私が成長したのかもしれませんが、たぶん、本書がわかりやすかったからだと思います。IMG_1604

日本と海外とのつながりを重視し、歴史全体を観る目を養うという意味で、大学入試問題の対策にも参考になる本ですので、高校の先生にとっても役立つものではないかと思います。

本の装丁も素敵で、著者や出版社の意気込みを感じます。

投稿者:

山下 洋輔

千葉県議会議員(柏市選出)。 元高校教諭。理想の学校を設立したいと大学院に進学。教員経験、教育学研究や地域活動から、教育は、学校だけの課題ではなく、家庭・地域・社会と学校が支え合うべきものと考え、「教育のまち」を目指し活動。著書『地域の力を引き出す学びの方程式』 2011年から柏市議会議員を3期10年を経て、柏市長選に挑戦(43,834票)。落選後の2年間、シリコンバレーのベンチャー企業Fractaの政策企画部長として公民連携によってAIで水道管を救う仕事を経験。 柏まちなかカレッジ学長/(社)305Basketball監事。 千葉県立東葛飾高校卒業。早稲田大学教育学部卒。 早稲田大学大学院教育学研究科修士課程修了後、土浦日大高校にて高校教諭。早稲田大学教育学研究科後期博士課程単位取得後退学。 家族 妻、長男(2014年生まれ)、長女(2017年生まれ)