【「働き方改革」】
「働き方改革」が議論されている。飲酒運転が厳罰化された時のように、今回は本気の改革のように感じる。
人手不足などを背景に、若手社員が長時間労働により離職に追い込まれている実態が、労働政策研究・研修機構の調査で浮き彫りになった。離職だけでなく、過労死の危険性もある。
批判もあるが、これを機に、女性も男性も、高齢者も若者も、障害や難病のある方も、一人ひとりのニーズにあった「働き方改革」が実現することを期待したい。
家事、子育て、介護、地域づき合いなども含めた働き方を考えるべきだ。仕事も生活も大事にしようという「ワークライフバランス」という表現があるが、切り分けて考えるものではなくなってきている。
在宅勤務など情報通信技術を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方も増えてくるだろう。
【自分の経験から】
私事ではあるが、二人の親となり、子育て真っ最中である。「職住近接(職住一体)」なので、家での事務作業は深夜・早朝になる。
私には定休日もなく、自分の裁量で働くことはできる。自営業のような働き方だ。できることなら、私の使える時間や体力は、活動や研究、仕事にあてたいが、今は子どもに多くを注いでいる。もどかしさや焦りもあるが、子どものお陰で得られた視点や開拓できた分野もある。大きな意味で、活動や研究につながっている。
ただ、仕事も家庭も全力投球で充実しているつもりだが、これだけでは人生が物足りなくなる気がする。先日、予定よりも会議が早く終わり、ふとバイクで出かけた時、ある本の内容を思い出した。
アメリカの社会学者レイ・オーデンバーグ『サードプレイスーコミュニティの核になる「とびきり居心地よい場所」』だ。この本の中で、市民社会、民主主義、市民参加、街への誇りを確立するのに、サードプレイスが重要だと論じられている。
【第三の居場所とは】
「働き方改革」の議論では、第三の居場所(サードプレイス)という視点も大切だ。
第三の居場所(サードプレイス)とは、家庭でも、職場でもない、第三の居場所で、カフェやバー、コミュニティセンターや図書館、公園や広場など創造的な交流が生まれるような心地良い場所を指す。都市は、第三の居場所を提供することが、今、求められている。生活の質や地域との関わり方が、都市の価値を生むようになってきた。
特に、柏は、家庭と職場を行き来する人が多い街なので、これまでの商業中心のまちづくりではなく、この第三の居場所について考えるべきだ。
柏駅前にはマンションが建ち、子育て世代も増えている一方で、柏駅前には商業を中心とした視点のまちづくりが続いている。住み良い街づくりへの転換が求められている。
子育て世代や高齢者、子どもや若者、働く大人、介護に関わる人など。それぞれにとって、ほっと一息ついたり、自分を取り戻せるような第三の居場所があればと思う。
素敵なカフェやバーだけでなく、図書館、歩きやすい道路や広場など、治安が良く子どもたちが安心して過ごせる環境も整えていくことが、街の魅力を高めることになる。
【自分たちの居場所は自分たちで作る】
ただ、従来のように第三の居場所を公共事業として作ろうと考えるものではない。また、第三の居場所の需要が見込まれるので、全国チェーンのような大企業に第三の居場所を作ってもらうものでもない。自然発生的で、自発的に生まれるには、どのようなきっかけや仕掛けが必要か考えていきたい。
柏まちなかカレッジの活動も、まちなかに対話文化を根付かせることで、第三の居場所づくりを目指してきた。誰もが先生になることができ、家庭や職場以外で、自分が認められる場。ムラ社会のような伝統的な地域コミュニティではなく、出たり入ったりが自由で、ゆるいつながり。同じ趣味や関心を持つ仲間が集まる場。話し合いながら、自分たちで作り上げていく。
第三の居場所をつくる営みは、民主的で、街への誇りを育て、市民社会を確立するものと言っても過言ではない。
【部活動のこれから】
子どもにとっての第三の居場所も注目される。教員の「働き方改革」も待ったなしである。特に、部活動だ。教員の多忙化や加熱した指導が問題視されている。教員にとっても、子どもにとっても、学校への拘束時間が長くなっている。
部活動を地域社会に移行し、地域の大人や卒業生とともにスポーツや文化を楽しむ地域のクラブ活動が提案されている。そういった地域クラブができれば、世代を超えた第三の居場所となり、地域で子どもたちを支える拠点になりうると期待されている。