以下、『BE-COM2月号 vol.256』 (2014.2.1 BE・COMときわ通信発行)に掲載より引用
【子ども・子育て新制度】
すべての子どもの良質な成育環境を保障し、子ども・子育て家庭を社会全体で支援するため、新しい国の制度について協議が進んでいる。これまで、子育てと幼児教育は、厚生労働省や文部科学省と管轄が分けら、いわゆる「縦割り行政」であった。制度や財源を一本化し、新しい仕組みを構築していく。そして、①待機児童の解消、②質の高い幼児期の学校教育・保育の提供(幼保一体化)、③地域の子育て支援の充実が目指されている。
【「待機児童解消」だけでない子育て支援】
子育て支援というと、待機児童対策があげられる。今日、子育てのために仕事を辞めるということは難しい。生活に必要な経済的な理由からも、人生の生き方というキャリアの面からも、夫婦共働きとなってくる。少子化対策や価値観の変化を論じるまでもなく、待機児童解消は緊急の課題である。
一方で、待機児童解消は、子育て支援施策の中の一部であるに過ぎない。働いていない親・働くことができない親も、子育て支援を必要としている。
たとえば、出産し、仕事を辞め、配偶者の仕事で引越してきた縁もゆかりもない土地で、子育てをしている親も多い。子育てに不安を抱える親、ストレスを抱える親子、孤立してしまっている親の存在も課題と捉えられている。児童虐待にもつながってくる。
【具体的な支援策】
「一時預かり保育」によって、親の安心感やストレス解消のサポート、親と社会のつながり、子育て学習ができれば、児童虐待防止や待機児童数抑制になる。用事がある時や子どもからちょっと離れたい時など、理由を問わず利用できる「一時預かり保育」の充実は、「助けて」と言えない親を助ける重要な施策である。
病児・病後児保育など、子どもの病気や緊急時の支援事業についても注目されている。札幌市などでは行政と民間が連携して実施している。
子ども医療費助成も大切な施策である。柏市では、通院・医療費助成は小3まで。千葉県の基準にあわせて対応しているが、近隣の自治体では子ども医療費の助成を拡充させている。子ども医療費の助成制度を、柏市も中3までの拡充が求められている。
待機児童とともに、学童保育のニーズもある。親が帰ってくるまで、子どもを一人で留守番させることが難しい時代であるからだ。勤務場所は近所ではなく、面倒を見てくれる兄弟・親せきや近所の人もいない、その上、物騒なニュースも耳にする。行政の学童保育だけでなく、地域や商店街で運営する寺子屋のような学びの場も広がってきている。
【子どもの貧困対策】
少子化問題を考えると、戦後日本社会の矛盾が、現在の子育て世代にしわ寄せられているとも言われる。子育てや教育には、家庭や社会の問題と密接に関わってくるものである。たとえば、児童虐待やいじめの背景には、貧困問題がある場合が多い。
今日の日本では、教育にお金がかかり過ぎている。これでは、教育機会が制限されてしまう。学歴が重視されていることを考えると、現在の所得格差が世代を超えて固定してしまうと指摘されている。
さらに日本では、他国と比べて多くない社会保障費のうち、大部分は高齢者に給付され、子どもや子育てへの給付は、ごくわずかである。特に、母子家庭や片親家庭への支援は手薄である。日本の子どもの貧困は、OECDからも指摘を受けている。
一方、フランスでは、安い福祉住宅が整備され、男女格差は小さく、労働時間も少ない。大学まで授業料は無料で、教育費負担が小さい。大学では、約2万円程度の学籍登録料などを負担するのみで、給付制奨学金を受けている。経済的に弱い立場にある学生ほど手厚く援助される。低所得者でも子育てし、大学まで通わせている。子育ては、自己責任ではなく、社会で支え合うという意識が強い。
【社会全体で子どもを育てる】
これまでの日本の家族支援は、社会ではなく、会社がおこなってきたと言っていい。右肩上がりの経済成長を背景に、労働者の「終身雇用」と家族の生活も保障してきた。しかし、不況に陥り、今となっては、労働者の雇用も保障できなくなった。
子育ては、社会全体で支えていく時だと、私は考える。政治・行政は、子育て支援への予算の割合を増やし、子育て施策を充実させる。企業は、労働時間を減らし、男女格差のない育休や柔軟な働き方を認めていく。自分自身の働き方も見直す。市民として、たとえば柏市のファミリーサポートなどで、子育て世帯を支援する。
二〇〇八年に秋田県では、子育て新税として県民税を0.4%増税し、年間25億円の財源を確保し、県独自の子育て支援や教育事業に使うという提案が出された。子育て支援に賛成する県民は多かったが、増税への嫌悪感から実現には至らなかった。今後、このような議論も必要になってくる。
そして、何より、子どもへの優しさを持つこと。ギスギスした暮らしにくい社会では、大人の心も荒んでくる。赤ちゃんが泣くと、舌打ちし、迷惑がる。そうではなく、笑顔で見守り、困っている親には手を差し伸べる。いつの間にか、そんな優しさを失っていないか。身近なところからでも、子育てしやすい雰囲気を作っていきたい。