高知県大川村を訪問し、地域の食や歴史などの文化に触れることができました。
私自身、大学の卒業論文と修士論文が、キリシタンによる寺社焼き討ちがテーマです。地域の信仰や文化財の設置-維持管理-廃止・荒廃-再建の構造を考えてきました。
地域の信仰と文化財の維持・継承という点で興味深かったのが、大川村の四国八十八ヶ所霊場です。
四国遍路の八十八ヶ所にならい、開設された霊場が全国各地にあります。
四国の八十八ヶ所を巡ることは、実際には難しいことです。自動車や飛行機のある今日ですら、なかなかできることではありません。
そこで、地域内に八十八ヶ所の札所を設置して、「講」と呼ばれるコミュニティを組織し、地域の人々が参加し、運営してこられました。
私たちの地域では、准四国八十八ヶ所東葛印旛大師巡拝(送り大師)があります。
東葛印旛大師巡拝は、毎年5月1日〜5日、柏市、白井市、鎌ヶ谷市、松戸市にまたがる地域、約80km歩きます。200年以上続いています。
全国に設置されている四国八十八ヶ所霊場ですが、その維持管理や次世代への継承は、決して簡単なことではありません。
以下、和田将之さん(現・大川村議会議員)のブログ記事「大川村のミニ四国八十八箇所 ~山奥の集落に残る信仰の形~」より
「しかし、遍路道を維持するのは決して簡単なことではありません。私の住む井野川集落の八十八箇所は、数十年前に土砂災害で多くの石仏が埋まってしまったそうです。地域住民が協力して探し出したものの、数体が行方不明に…。その後、近隣のお寺と相談をして集落にある延命寺の周囲に全ての石仏をご安置しました。井野川のミニ八十八箇所は1つにまとまり、現在に至るまで地域の人々に大切に管理されています。」
流山市西深井にある「利根運河大師堂」も似た経緯です。
運河開削工事の犠牲者の慰霊などを目的に1913年に新四国八十八ヶ所運河大師霊場が開かれたものの、昭和の水害により堤防上にあった礼所は立ち退くことになり、平成になってから大師像を集めて霊場を再建したとのことです。
参考 https://nagareyamakankou.com/tourism-information/toneunga-daishidou/
大川村井野川集落の四国八十八ヶ所霊場のような文化財が、全国には沢山あるはずです。
人口が増えている地域ですら、文化を継承していくことは課題となっています。
地域の文化や歴史も、インフラと同様、維持管理や継承が大きな課題です。
知られないまま消失するのではなく、記録に残し、地域の人とともに保全・継承する仕組みを作っていきたいです。
文化や信仰についても学ぶことも必要です。
国際化する今日、移民も増え、文化が多様化することが予想されるこれから、欠かせません。
宗教教育は、「特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない」と憲法で定められ、現在、学校教育の中で避けられていますが、一方で憲法では、「宗教に関する寛容の態度及び宗教の社会生活における地位は、教育上これを尊重しなければならい」とあります。
特定の宗教のための教育ではなく、生活に根ざした宗教について、もっと学んでいくことをすすめていきたいです。
この井野川集落の四国八十八ヶ所霊場では、日本ミツバチの巣箱が設置されいていました。
また沢の水を引き、各家庭に配水するタンクも見ることが出来ました。
何気ない一つ一つのことから、考えるヒントをいただきました。