ソーシャルインパクトボンド(SIB)について、2017年には八王子市でも導入され、注目され始めたように感じます。
2014年1月10日、ソーシャル・インパクト・ボンド国際シンポジウム「社会的インパクトの定量評価と新しい官民連携の社会投資スキームの構築へ」に参加した時のレポートが、以前のブログに掲載していたものを、こちらで紹介いたします。
※ソーシャル・インパクト・ボンド-新しい官民連携の社会投資スキーム 2014/02/09
ソーシャル・インパクト・ボンド-新しい官民連携の社会投資スキーム
2014年1月10日、ソーシャル・インパクト・ボンド国際シンポジウム「社会的インパクトの定量評価と新しい官民連携の社会投資スキームの構築へ」に参加。
人口が減少し、税収は減る。一方、高齢化やインフラの老朽化で、行政の支出は増えていく。
マイケル・ビチャード卿「今後の社会課題を解決するために、公的予算が充分に供給され続けるとは考えられない」(2012年7月)
地方自治体の経営を考える上で、避けて通れない課題である。
今回のシンポジウムでは、ソーシャル・インパクト・ボンドという仕組みを学んだ。
【ソーシャル・インパクト・ボンドとは?】
ソーシャル・インパクト・ボンド(社会インパクト債権、SIB)とは、社会課題を解決するための投資資金を集め、現行のサービスでは満たされない、社会的弱者のニーズに対応する施策へ資金を提供するものである。
日本では様々な社会的課題が山積みとなっている。
国、地方自治体の債務比率の高さを考えると、
社会的な課題の解決に民間資金を呼び込みこむことが必要不可欠である。
SIBは社会的課題を民間の資金を取り込むことで解決を図る方法である。
また、その社会的な課題が解決された場合にのみに政府が事前契約に基づく成果報酬フィーを提供するスキームであり、失敗した
この点で、日本のSIBの潜在可能性は極めて高い。
しかし、社会的価値を評価する手法や運用が、まだ確立されておらず課題となっている。
投資なので、客観的評価が必要になる。
しかし、「幸せ」や「社会的安定」など、数字で表せない価値をどのように測るのか?
事業に関わる複数のステークホルダーたちが合意できる指標を立てる。
そのためにも、事業の目標を明確にしていなければならない。
目標達成の中間指標を具体的に立て、計測する。
例)児童の交通安全意識>道路横断時の左右確認行動>交通事故件数以下のような事業に対して、評価が行われた。
1)平成23年度セーフティネット支援対策等事業補助金
2)ITを活用した若者就労支援プロジェクト
3)震災復興プロジェクト
4)釧路市の生活保護受給者の自立支援プログラム ※春に視察しました。
5)日本財団での事業評価 など図書館や児童相談所など、柏市でも考えていくべきテーマである。
導入に当たっては、市の優先順位や事業目的を明確にしなければならない。
シンポジウムは、以下のような進行であった。
金子郁容氏(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授/SFC研究所所長)からご挨拶は、形式ばったものではなく、日本の社会課題についての英語でのプレゼンでした。
伊藤健 慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任助教からは、「社会的インパクト評価と社会的投資の潮流」について。
伊藤氏は、米国Thunderbird Global School of Management にて経営学修士課程を修了後、GE Internationalに入社。シックス・シグマ手法を使った業務改善や、コーポレート・ファイナンス部門で企業買収後の事業統合等を行う。ソーシャルベンチャー・パートナーズ東京、NPO法人ISLを経て2010年より 慶應義塾大学政策・メディア研究科 特任助教。
主に社会的インパクト評価を中心に研究。「ソーシャル・ファイナンス」「ソーシャル・ビジネスの商品開発とプロモーション」等の授業を担当。Asian Venture Philanthropy Network日本アドバイザー、特定非営利活動法人SROIネットワークジャパン 代表理事。
元英国内閣府、センター・フォー・ソーシャル・インパクト・ボンド、社会インパクト分析官のエマ・トムキンソンさんからは、「英国におけるソーシャル・インパクト・ボンドの展開と英国政府の社会投資政策」について。
エマ・トムキンソンさんは、オーストラリア国家監査局を経て、2010年からオーストラリア、ニュー・サウス・ウェールズ州Department of Premier and Cabinet並びに財務局にて青年犯罪の更生事業に関する社会インパクト債の運営に携わる。2012年から2013年まで英国Cabinet Office勤務。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス・アンド・ポリティカル・サイエンス修士課程、メルボルン大学修士課程終了。
英国ソーシャル・ファイナンスのアントニオ・ミゲールさんからは、「グローバルに展開するソーシャル・インパクト・ボンドの動向」について。
アントニオ・ミゲールさんは、ポルトガルでの社会イノベーション戦略を企業に導入することを中心としたコンサルタンティングを経て、2012年4月よりソーシャルファイナンスにて現職。
英国における刑務所再犯率低下関連のSIB事業や、若者の雇用支援するSIBスキームの開発を行っている。Catolica Lisbon大学において企業経営修士課程、ハルト国際ビジネススクールにおいてソーシャルアントレプレナーシップ修士課程修了。
パネルディスカッションでは、「社会的インパクト評価とソーシャル・インパクト・ボンドの日本での導入に向けて」について具体的な説明や質疑応答がありました。
※2014年に、山下は柏市議会でも提案しました。
2015年には柏市の総合計画について、財務的な評価だけでは測定できない社会的価値を評価してきたソーシャル・インパクト・ボンドの評価・測定法などを参考にすべきではないかと指摘しました。