皆さんこんにちは、新年度の大学授業がオンラインになるのではないかという噂に振り回されています、宮島凱生です。すっかり暖かくなり始めましたが昔から季節の変わり目というものがどうも苦手で、冬の服装から転換するタイミングを待っている間に夏になってしまいそうです。
○政治家のネット進出
さて、前回はネット献金とはなんぞや?という話をしました。ネットと政治というものは結構重要な転換点だったりします。政治家個人が講演会など以外で情報を発信できるというのはかなりの武器になるのです。
例えば、つい先日千葉県知事選に立候補した熊谷俊人千葉市長の政策発表記者会見が行われ、11の県政ビジョンが発表されました。
それに関する報道として産経新聞は『「マリン球場建て替えを検討」千葉市長が政策公表 千葉県知事選』という記事(2021年2月20日の記事名)を発表します。
実際に会見やホームページの政策集をご覧になった方ならおわかりだと思いますが、マリン球場の建て替えはビジョンの11番目、「県と政令市の理想的関係を構築し、千葉県の総力を高める」という記事内にて6つの具体的な施策の中の1つとして扱われたもので、前面に押し出した政策ではありません。
これに対して熊谷氏は2月21日に「私の政策集の中心ではないマリン建て替え検討や「すし県」等を限られた紙面で掲載するのはなにか意図があるのか、PVを得やすいからなのかは分かりませんが、残念です。」とツイートしました。
山下さんとのミーティングでこの話題を出したところ、「昔はこういった大衆受けする記事が出ても講演会などで文句を言うしかなかった。今はTwitterなどで即座に発信できるから便利になった」という旨を教えていただきましたが、たしかにそのとおりだなぁと思います。
私はまだ20年ちょっとしか生きていませんが、昔は政治、政治家はテレビや新聞を通して見るもので、街頭演説をやっていても立ち止まって聞くようなことはありませんでした。しかし昨今はインターネットの活用によって当事者の声というものが聞けるようになっています。よくインターネットは〇〇を変える、変えたという言説を耳にしますが、政治、選挙も間違いなく変わっていっているのです。
その具体例として、今回ミーティングでイタリアの「五つ星運動」というものが話題にのぼりました。イタリアの左派ポピュリズム政党でインターネットでの活動を通して勢力を拡大してきた政党です。「これについて調べると面白いよ」とのお言葉をいただき鋭意読書中です。
さて、この五つ星運動や国内で活動中のれいわ新選組などに共通して言われる「ポピュリズム」。
ポピュリズムという言葉は耳にしたことがあるけれどもどういう考え方なのかはわからないという方も多いのではないでしょうか。そこで今回はポピュリズムについてお話していこうと思います。
先にお断りしておきます。これからの話はなるべく中立の立場から書いていきますがポピュリズムについて批判的、あるいは肯定的に見えてしまうことがあると思います。それは一大学生の文章力の限界であり勉強させていただいている山下洋輔さんの考え方とは異なります。ご了承ください。
○ポピュリズムとはなにか?
さて、ポピュリズムとはなんぞや。日本語では大衆主義、否定的な立場の人は大衆迎合主義などといいますが、早い話が「民衆の立場になって一般市民の利益、権利を守るよ!」という思想です。そんないい話があるなんて!と思った方も多いと思います。
実際に21世紀に入ってからヨーロッパで勢力を広げ、アメリカのトランプ元大統領や日本では大阪維新の会、れいわ新選組などがポピュリズム政党とされており、影響力は強まっています。この思想についてもう少し詳しく見ていきましょう。
参考文献は 水島治郎『ポピュリズムとはなにか-民主主義の敵か、改革の希望か』中公新書、2016 となっております。私のつたない文章でわかった気にならずに是非実際に読んでいただければと思います。
さて、そもそもポピュリズムとはなにか。ポピュリズムには3つの特徴があります。その1つには政治集団と有権者の距離が非常に近いことが挙げられます
政治学者の大嶽秀夫はポピュリズムを
「政党や議会を迂回して有権者に直接訴えかける政治手法」
であるとしています。日本ではこのような”政治手法”をポピュリズムとして捉えることが多いようです。
ポピュリズム第2の特徴としてエリート批判というものがあります。イギリスのマーガレット・カノヴァンは、ポピュリズムを
「人民の立場から規制政治やエリートを批判する政治運動」
としています。
既存の官僚制、司法制度は腐敗したエリートの巣窟であり、これらは「人民の意志」の実現を阻害するものであるとして批判するのです。
ここでいう人民は高学歴層やメディア、官僚などのエリート以外の言わば「普通の人々」、また同じ思想を共有する「我々」としての人々を指します。
現代の日本ではよく左派、右派という言葉を耳にしますが、フランスの思想家ツヴェタン・トドロフはポピュリズムはそういった左派、右派の伝統的な政党を「上」に属するエリートと位置付けて「下」から批判するのがポピュリズムであるとしています。
つまり、社会的に弱者とされる人々が社会的に強者とされる人々を批判し、対立する構造がポピュリズムの特徴と言えます。
ポピュリズム第3の特徴にカリスマ的リーダーの存在が挙げられます。既存の政党や政治と距離を起き、わかりにくい専門用語を用いて国会で議論する官僚や政治家よりも、直接民衆の声を拾い上げ、明確な言葉で端的に表現できるリーダーを置くことで大衆の支持を得ることができます。
以上の3点、
①「民衆への直接的な主張」
②「エリート、既存社会批判」
③「カリスマ的リーダーの存在」
がポピュリズムの特徴として挙げられます。
ここまでの話で「ポピュリズムっていいじゃん!」と思った方もいらっしゃると思います。『有権者にわかりやすく直接語りかけてくれて、ムダで腐敗した官僚制を一掃、その上カリスマ的なリーダーの下で円滑な政治ができる!』いやはやいいことづくめですね。
さて、こんな完全無欠なポピュリズムにはこのような批判がつきまといます。曰く、「ポピュリズムは独裁制のはじまりである」「ポピュリズムはデモクラシーの破壊者である」
なぜこんな批判が出てくるのでしょうか。次回はポピュリズムと民主主義の関係について見ていきます。是非お付き合いください。
(文責・宮島凱生)