政治の形を変える二つの道 ― 小選挙区制30年、千葉県議会の現場から

千葉県議会議員(柏市選出)の山下洋輔です。

衆議院に小選挙区制が導入されて、まもなく30年になります。

「個人」の政治から「組織」の政治へ

かつての中選挙区制では、一つの選挙区から3〜5人が当選しました。自民党の候補者同士が同じ選挙区で議席を争うため、党の看板だけでは勝てません。議員はそれぞれ自前の後援会を築き、派閥から資金や人の支援を受けて選挙を戦いました。派閥は党の中のもう一つの党であり、派閥ごと党を出れば、そのまま新党として立つこともできました。独立して勝てるかどうかを、自分の地盤と資金で見積もることができたのです。議員一人ひとりが、自らの地盤と後援会を基盤に戦う。いわば「個人」の力で立つ政治です。

1994年の政治改革は、この構図を大きく変えました。小選挙区制では一つの選挙区から一人しか当選しないため、党の公認を得ることが出発点になります。あわせて政党交付金が導入され、資金の流れも党に集まるようになりました。今の議員の多くは、党に公認され、党から資金を受け、党の地方組織に選挙を支えてもらって当選しています。選挙の主体は、議員「個人」から、党という「組織」へと移ったのです。党を割って出れば、公認も資金も組織も失います。だから議員は党を割れないのです。

政治の形を本当に変えたいなら、選挙制度そのものを変えるか、既存の大政党に匹敵する地方組織を何十年もかけて築くしかありません。今、政界再編は起こりにくい構造になっているのです。

この二つの道について、千葉県議会の現場から考えてみたいと思います。

一つ目の道、選挙制度を変えること

来年4月の県議選に向けて、県議会では議員定数と選挙区の見直しが議論されてまいりました。現在の千葉県議会は41選挙区・定数95。そのうち自民党が49名と、単独で過半数を占めております。

自民党案は、選挙区を41のまま維持し、船橋市を1増やして定数96とするものです。人口の少ない地域にも代表を置き、地域の声を県政に届けることを重視した案です。

これに対し、立憲民主党・公明党・千葉新政策議員団の3会派は、26選挙区・定数86とする共同提案を行いました。1票の格差の是正、1人区の解消が柱です。前回の県議選では41選挙区のうち15選挙区が無投票となりました。1人区が多いことで新しい人材が挑戦しにくく、有権者が選ぶ機会も失われている。そうした問題意識に立った案です。

これまで自民党以外の会派は、それぞれ別の案を主張してまいりました。今回、3つの会派が考えの違いを超えて一つの案にまとめたことの意義は大きいと考えております。

しかし10月の本会議で、多数決により自民党案が可決されました。

ここに構造的な問題があります。選挙制度を変えることは、今の県議会の構成を変えることです。そしてその制度を決めるのは、今の制度で当選してきた現職議員自身です。多数を占める会派にとって、制度の変更は死活問題でもあります。

先日の柏市民新聞では、二つの案が両論併記で丁寧に報じられ、「議員だけでなく、第三者の意見を聞く仕組みが必要だ」との趣旨の私のコメントが掲載されていました。

柏市民新聞2026年10月23日号

そして先日のトークライブでこの話をしていたところ、前回の定数検討委員を務められた公明党の阿部県議が、コメントで参加して下さいました。私の考えに賛同して下さり、委員会でも第三者の意見を聞く仕組みを提案してきたものの、採用されなかったとのことでした。会派を超えて同じ問題意識を共有できたことを、大変有り難く感じております。自分たちのルールを自分たちだけで決めることの限界は、どの会派にも共通する課題です。

山下洋輔トークライブvol.351 https://www.youtube.com/live/6Rlbs3himP4 毎週金曜23時から配信しています。

二つ目の道、地方に根を張ること

メディアでは、国会での勢力争いが大きく報道されます。しかし地方の現場では、まったく別の切実な課題が待ったなしで押し寄せております。

災害の激甚化・頻発化。ウェブサイトの基盤となるソフトウェア(PHP)に深刻な脆弱性が見つかったことによるシステムダウン。物価高騰、治安の悪化、人手不足。こうした課題に、地方行政は今まさに対応を迫られ、地方議会で議論が重ねられております。

政界の派閥争いや党の論理ではなく、地域のリアリティに根差した政治を。これは、私が市長選挙などを通じて訴えてきたことでもあります。

国政と地方政治はつながっております。国政が地域の暮らしの実感から離れてしまえば、政治全体が有権者から遠ざかってしまいます。政治の形を変える力も、結局は地方で目の前の課題に一つひとつ向き合い、地域の皆さまと積み重ねてきた信頼の中からしか生まれないのではないでしょうか。

無投票の選挙区が増え、新しい人が挑戦しにくくなっている今の県議選の課題も、この「根」が細っていることの表れなのかもしれません。

制度を変える議論を開いていくこと。そして地方に根を張り、地域の課題に向き合い続けること。どちらも近道はありませんが、県議会の現場から一歩ずつ取り組んでまいります。

投稿者:

山下 洋輔

千葉県議会議員(柏市選出)。 元高校教諭。理想の学校を設立したいと大学院に進学。教員経験、教育学研究や地域活動から、教育は、学校だけの課題ではなく、家庭・地域・社会と学校が支え合うべきものと考え、「教育のまち」を目指し活動。著書『地域の力を引き出す学びの方程式』 2011年から柏市議会議員を3期10年を経て、柏市長選に挑戦(43,834票)。落選後の2年間、シリコンバレーのベンチャー企業Fractaの政策企画部長として公民連携によってAIで水道管を救う仕事を経験。 柏まちなかカレッジ学長/(社)305Basketball監事。 千葉県立東葛飾高校卒業。早稲田大学教育学部卒。 早稲田大学大学院教育学研究科修士課程修了後、土浦日大高校にて高校教諭。早稲田大学教育学研究科後期博士課程単位取得後退学。 家族 妻、長男(2014年生まれ)、長女(2017年生まれ)