キネマ旬報シアターにて上映中の「ブックセラーズ The Booksellers 」を鑑賞。
ネット通販の発達により、本屋に足を運び、本を探し(ぷらぷらと眺め)、買うという行動が減り、本屋さん(ブックセラー)も従来通りの営業が厳しくなっています。
さらに、電子書籍にいたっては、物体としての本すら存在しません。
ネット社会は本を破壊してしまうのでしょうか?
そんな状況での本屋さん(ブックセラー)についてのドキュメンタリーです。
個性的な本屋さんやアーカイブの役割など、これからの本屋さんの希望についても示されています。
本について、私の人生を振り返ると、三つの大きな経験があります。
①一つが、「地方への研究調査と本屋巡り」です。
歴史の研究では、現地を訪れ、歩く「巡検」が重視されていました。史料の調査でも、各地を訪れました。
ご当地の博物館や図書館をチェックするのは当然として、せっかく、その地を訪れたのだからと、先生や先輩方は、お土産屋さんに行くように、ご当地の本屋さんを巡り、本を買って帰ります。
古本屋ともなると真剣です。本との出会いは一期一会。それだけではなく、貴重な史料が出てくることもあるからです。
ブックオフにも足を運び、百円均一のコーナーも、ちゃんとチェックしているのは驚きました。
何十冊もの本を背負いながら移動していたのを思い出します。
その荷物で、山も登りましたね^^;
京都や大阪、名古屋、福岡といった大きな都市はもちろん、歴史ある地方都市や学園都市など、限られた滞在時間に夢中になって古書店巡りをしていました。
リスボンに行った時も、ルイス•フロイス『日本史』を探し続けました。今なら、ネットで買えるので、本当に楽になったと思います。
②二つ目は、「大学からの帰り道、古本屋で道草」した経験です。
こちらは、かなりの長い時間とお金を費やしました。20〜30分くらいの道のりを、1〜2時間かけて歩いていました。
修士課程では、その道草の成果を、指導教官である村田安穂先生と語り合い、これまた長い時間を過ごしました。先生も、本当に本が好きな方でした。
先生との会話によって、歴史の本や古文書の知識や目利きが鍛えられました。
卒業の時には、もう道草ができないので、ずっと欲しかった全集を購入しました。
教員経験を経て、博士課程に戻った時には、本探しではなく、読むことを第一に考え、古本屋の道草で時間を費やさないよう、JR高田馬場駅ではなく地下鉄早稲田駅に変更しました。
博士課程の時は、働きながらの学生だったからというだけではなく、ネット書店が浸透してきたことと、歴史学から教育学に移り、文化が変わったこともあるのかもしれません。
今の優秀な学生さんたちと接し、私の古本屋さんで過ごした時間を、もっと別のことに使っていたらと悔やまれます。
しかし、この映画「ブックセラー」を観て、これらも貴重な時間だったんだと思えるようになりました。贅沢な時間を過ごすことができました。
この「ブックセラー」は、私の人生を肯定してくれた映画です。
③最後に、「祖父母との思い出」です。
小さい頃から、祖父母と買い物にでかけた際、私や弟は本屋で待っていました。
そして、用事を済ませた祖父か祖母が本屋に戻ってきて、私の選んだ本を買ってくれました。
この経験が、私と本の原点です。
祖父母には、今でも感謝しています。
この映画のチラシに、書かれた言葉です。
「本のない人生なんて。」
キネジュン図書館 柏の中で、大好きな場所の一つです。