誰ひとり見捨てない教育体制を-議会質問⑤

スクールソーシャルワーカーについてです。

私は、2011年9月に柏市議会議員となって以来、「誰ひとり見捨てない教育体制と子どもたちを取り巻く環境の向上」を目指し、活動してきました。

その中で、2012年からは、スクールソーシャルワーカーの設置に力を入れ、柏市に働きかけてきました。

2007年、教員を辞め、教育学に研究をしながら、不登校児童生徒支援のNPOの活動にも参加していました。

当時、スクールカウンセラーが導入されていました。
学校の教員だけではなく、外部の立場で、心理の専門家による相談は、効果的な不登校児童生徒の支援が加わったと言えます。

ただ、いじめ、不登校など教育の諸問題は、こども本人の問題のみならず、家庭・地域・社会・経済の問題と密接に関わるものであると考えます。つまり、児童生徒本人が抱える問題は、学校や本人のメンタルの問題だけではありません。

子どもたちが、健やかに成長していくためには、学校や家庭が安心・安全に生活できる場であることが不可欠です。
しかし、私の高校の教員としての経験や不登校児童生徒支援のNPOの活動から痛感するのは、いじめ、養育困難、家庭内暴力など様々な事情で、その安心・安全が確保できず、不登校や学校内外における問題行動を引き起こすなど、子どもが抱える課題は複雑化しています。

このような課題に対して、学校や家庭、地域を含めた子どもたちを取り巻く環境に着目し、その調整を図るのがスクール・ソーシャルワーカーです。

私の所属する会派、議会の教育民生委員会、教育委員会でも、「一人も見捨てない教育」によって、市内の学力を向上させた大阪府茨木市を視察し、議論しました。
教育のハード面だけでなく、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、補助教員など学校現場が必要としていた人的な支援を行い続けることにより、現場の理解を得られるようになってきたとのこと。

社会の流れと私のしつこい提案の甲斐もあり、2016年度からスクールソーシャルワーカーが新設され、柏2中に2018年度でも拡充することが決まりました。

今年度(2017年度)は、試験的に、スクールソーシャルワーカーを柏2中に配置。文科省の方針にしたがって、ゆくゆくは全中学校に配置できるような体制を検討されています。

スクールソーシャルワーカーが設置され、拡充される方針が示された今、これからは、よりスクールソーシャルワーカーの特性を生かした活躍ができる環境整備を、議会で議論しています。

不登校支援、いじめ防止対策、子供の貧困対策において、スクールソーシャルワーカーの重要性は認識され、この点について議論する必要はなくなりました。

ただ、スクールソーシャルワーカーの活用は自治体によってその役割や位置づけが異なります。自治体全体の方針が定まっておらず、具体的な仕事内容や権限が不明確となり、十分に機能してない事例も全国で見受けられます。

一方で、うまく機能している自治体では給与等の待遇面はもちろん、研修など専門性を高める継続的な関わりがあり、スーパーバイザー等が設置され、スクールソーシャルワーカー同士や関係部署とも連携体制がしっかりし、自治体全体の方針に持ち基づいたガイドラインによってスクールソーシャルワーカーの位置づけや権限が明確に定められています。

そこで、4つ質問しました。
①柏市ではガイドラインを作成しているとのことですが、スクールソーシャルワーカーの具体的な業務内容、権限、その位置づけについて、
1)スクールソーシャルワーカーの派遣依頼の手順は明確になっているでしょうか?
2)派遣依頼の手順について、各学校(校長及び教員)への周知は十分でしょうか?
3)スクールソーシャルワーカーの役割がわかるような研修会(生徒指導部会など)を設けているでしょうか?

②各校のニーズの傾向とスクールソーシャルワーカーの適正な配置について
1)市内の児童生徒の問題行動等(いじめ、不登校)や子どもの貧困調査を踏まえて、今の活動実態はどのようにお考えでしょうか?活動実態が低調ならば、その理由をどのように分析し、どのように改善するつもりでしょうか?
3)改めて適正な配置人数や勤務日数などご検討いただけないでしょうか?

③学校やスクールソーシャルワーカー、地域が行政関係機関等連携体制
1)例えば校内ケース会議などの開催に合わせてスクールソーシャルワーカーの派遣依頼ができていますでしょうか?
2)要保護児童対策地域協議会などへの参加は可能でしょうか?
3)地域資源(児童館、子ども食堂など)との連携や情報交換や訪問は可能でしょうか?また積極的に活用しているでしょうか?

④「児童生徒の教育相談の充実」では、各自治体でスクールソーシャルワーカーや教育相談体制についてのガイドラインを作るように示されていますが、柏市でもガイドラインのあり方の研究会を立ち上げ、スクールソーシャルワーカーも参画しながら共同で作成する場としていくことについては、いかがお考えでしょうか?
少なくともスクールソーシャルワークスーパーバイザーを採用し、有識者からの意見、ワーカーの資質向上を図る機会は設けることについて、いかがお考えでしょうか?

今回の市議会での議論から、社会福祉の専門家であるスクールソーシャルワーカーと学校教育の立場である教員の強みと役割分担を認識した体制を構築する必要性を感じました。

スクールソーシャルワーカーを増員するにも、なり手不足が見込まれます。(これを予測して、早く導入することをていあんしてはいたのですが。)
そこで、柏市では教員に社会福祉の意識を育てる研修を続け、ゆくゆくはスクールソーシャルワーカーとして活躍できる人材を育てていこうという考えを読み取ることができました。

教員として社会福祉の意識を育むことは大切ですが、
社会福祉の専門家が外部から学校教育に参加する効果など、組織的な支援体制をこれから考えていきたいと思います。

投稿者:

山下 洋輔

千葉県議会議員(柏市選出)。 元高校教諭。理想の学校を設立したいと大学院に進学。教員経験、教育学研究や地域活動から、教育は、学校だけの課題ではなく、家庭・地域・社会と学校が支え合うべきものと考え、「教育のまち」を目指し活動。著書『地域の力を引き出す学びの方程式』 2011年から柏市議会議員を3期10年を経て、柏市長選に挑戦(43,834票)。落選後の2年間、シリコンバレーのベンチャー企業Fractaの政策企画部長として公民連携によってAIで水道管を救う仕事を経験。 柏まちなかカレッジ学長/(社)305Basketball監事。 千葉県立東葛飾高校卒業。早稲田大学教育学部卒。 早稲田大学大学院教育学研究科修士課程修了後、土浦日大高校にて高校教諭。早稲田大学教育学研究科後期博士課程単位取得後退学。 家族 妻、長男(2014年生まれ)、長女(2017年生まれ)