2013年8月、オレゴン州ポートランドPortlandのPNCA(Pacific Northwest College of Art)を訪問し、Kavin Buck副学長からご説明頂きました。
PNCAには、イラストレーション科、デザイン科、写真科、彫刻科、印刷科、映像・音響科、リベラルアーツ科、インターメディア科などの学科があり、修士課程があります。
創立104年の芸術大学です。創立当初は、ダウンタウンの現在のポートランド美術館の場所に校舎がありました。
現在は、パールディストリクトに校舎を構え、世界的なクリエイティヴ会社のワイデン&ケネディや数々のギャラリーとともに、創造的な文化を醸すパールディトリクトの核となっています。
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この校舎は売却され、2015年に近くに新設されます。
パールディストリクトの公園を囲むように、PNCAのギャラリーと学生寮を配置し、PNCAのエリアが生まれます。常に新しい挑戦をし、変わり続ける伝統校です。
シルクスクリーンや映像、アニメーション制作を見学しました。アニメーションは成長分野で、ポートランドにもコールラインというNIKEやAdidasのアニメーションを制作しているスタジオがあるとのこと。
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自然環境への配慮が、使用素材や制作方法から、
日常生活(ペットボトルではなくマグカップを使うなど)にも生きています。
訪問した時が夏休みであったため、小学生や高校生が、授業を受けたり、ワークショップを体験していました。地域コミュニティを大切にする学校の理念から行っているとのこと。
「ARTは意味」です。この意味を伝えるためには、対話が必要です。この対話が生まれるためには、コミュニティの存在が重要になってきます。PNCAは、対話とコミュニティを重視しています。
日本では、芸術大学や美術大学を出ても、就職がないと言われています。PNCAは、104年の伝統があるので、就職先はあるそうです。それだけではなく、ARTを学ぶことは、社会課題を発見し、創造的な解決策を提示することでもあるのです。
現実社会の課題に対して、プロジェクトを立て、実践していくコースもあります。まさに、デューイの提唱した「経験による学び」であり、キルパトリックの言うプロジェクト学習です。
ARTは、社会からかけ離れたものではありません。そして、ARTは、コミュニティを形成し、コミュニティの中で生きているものと考えられるのです。
この質問をきっかけに、ARTと社会、コミュニティの話に広がっていきました。
一例として、学生が制作した駐輪場があります。PNCAの約8割が自転車通学です。駐輪の課題に対し、創造的な解決策を示しました。
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絵を描いたり、制作したりする技術そのものだけでなく、その背景にある哲学や方法論は、これからの社会に必要なものであると実感しました。
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