私たち子育て世代にとって、待機児童問題は切実であり、その解消に向けて全力を尽くすことは、緊急の課題です。
そして同時に、強く声をあげられる事はありませんが、幼児期の大切な時期に子どもが有意義な時間を送って欲しいという親の願いも、柏市として受け止めていかなければなりません。
柏市の幼児教育の質を向上させる仕組みや地域を築いていくため、日々、活動しています。
こども庁創設が話題となり、教育・保育の一元化が議論される今こそ、チャンスです。自治体をあげて子どもが育つ環境を整え、質の高い幼児教育を提供できるように働きかけていきます。
これは子育て支援のみなず、地域全体にとって効果的な政策です。
2000年にノーベル経済学賞を受賞したヘックマン氏の『幼児教育の経済学』では、以下の点を示しました、
◆就学前教育がその後の人生に大きな影響を与えること。
◆学力やIQに代表される認知能力だけではなく、忍耐力、やる気、協調性、計画性、リーダーシップといった非認知能力も重要。
◆就学前教育への公的投資は、非常に収益率が高い。就学前教育は、将来の所得や健康を向上させ、生活保護率や逮捕率が低くなるという調査結果が出ている。
幼児教育の重要性は認識されていますが、現在の日本では、幼児教育は家庭まかせになっています。
熱心なご家庭は素晴らしい幼児教育を受ける一方で、幼稚園や保育所に通わせることが困難な家庭が増えてくることが心配されています。
教育機会の保障という面からも、幼児教育は必要な政策だと考えます。
子育て環境が充実した自治体は、人口増加も期待できるということで、どの自治体も待機児童対策に力を入れてきました。
待機児童解消の実現が見えてきた今、もっと大きな視点で子育て支援や教育について取り組むべきです。
イタリアのレッジョ・エミリア市では、二十世紀最先端の教育理論と発達理論を研究し、それらをバランスよく組み立て、地域特性に合わせた教育を、公教育で実現させました。その幼児教育局主事は、以下のように語っています。
「子どもをめぐる政策が、子どもをめぐる政策だけにとどまることは決してなく、人々の現在の生活の質、未来の生活の質、そして未来の可能性と密接にかかわるものである」、と。
教育実践には、社会的運営と参加が大切です。学校内だけではなく、親や地域・社会をどう巻き込むか。他者への心遣いが、新たな心遣いを生むのです。公共のスペースに対する心遣いが、地域社会への参加へとつながります。
成功している教育実践は、地域コミュニティを築き、豊かな地域社会を実現させています。教育制度の改革が地方主権を推し進める、と言われるのはそのためです。
教育は、社会や人々の未来にとって、堅実な投資なのです。
私立幼稚園協会の山田聡理事長(すみれ幼稚園)、吉田武史副理事長(吉田幼稚園)とお話しいたしました。
今、柏市では、約5割の子供が幼稚園に通い、認定こども園を含めると約7割から8割の子どもが、幼稚園か認定子ども園に通っていることになります。
幼稚園でも預かり保育が行われており、8時間半から12時間の保育を幼稚園が担っており、幼稚園が待機児童解消でも大きな役割を果たしていると言えます。
障害のある園児や日本語の指導が必要な外国籍の園児も増え、貧困や虐待といった社会の課題も深刻な状況であり、柏市としての支援も必要です。
しかし、保育園・こども園は柏市の管轄ですが、幼稚園は県の管轄ということで、柏市は幼稚園に対しては冷淡に感じられます。
教育の質の向上には、教員の確保と研修や働く環境は、重要なポイントです。
しかし、柏市では、待機児童解消のため保育士処遇改善のための手当と家賃補助政策の結果、幼稚園の教員のなり手不足を招いています。
このままでは教員不足により、規模を縮小する園も、さらには運営が難しくなる園が出ることも心配されます。幼稚園教員への処遇改善も検討すべきです。
また、私立幼稚園や保育園、認定こども園の枠組みにとらわれず、 教育委員会や保健所、こども部が一体となって、柏市のすべての子どもたち支えていくべきです。
幼児教育センターや幼児教育アドバイザーの設置などを文科省は推進していますが、制度としてだけでなく、子どもたちや現場の声に耳を傾けて、幼児教育・保育の質が改善されるよう、これからも活動してまいります。