リヒテルズ直子さんの『オランダの性教育』を読んで

リヒテルズ直子著『0歳から始まるオランダの性教育』(日本評論社)を読みました。
1.性教育はシチズンシップ教育
リヒテルズさんに、初めてオランダの学校をご案内いただいた時、小学校低学年の教室に掲示されていた児童の作品についてお話ししたのを覚えています。たしか、裸から描き、その上に服を作って貼り、着せていくものでした。移民が多く、多様な人種、文化、宗教が共存する国なので、性教育の一環で、価値観の違いを尊重する大切さを身につけることを目指す教育でした。

性教育は、人間関係を学ぶことであり、人権尊重と市民としての権利・義務を学ぶシチズンシップ教育そのものです。

2.子どもたちの身を守るための教育
日本では、性について語ることがタブー視されていたりして、なかなか性教育は、学校教育では不十分だと思います。

しかし、実際の日本の社会では、インターネットやコンビニでさえポルノの性描写が手に入り、性の商品化が広がり、性犯罪や暴力、差別は深刻です。

SNSなどでのメディアリテラシーやはっきり「No」と言える習慣など、自分の身を守るための訓練も必要です。

性について興味を持つこと自体を否定せず、制欲を刺激するような性商品ではなく、教育学的な見地から配慮された知識を伝えていかなければなりません。

思春期の子どもたちにとっては、家庭より学校や身近なコミュニティで教えてもらったり、相談できる体制を作っていくべきです。

3.インクルーシブな社会を目指す教育
すべての人は、一人ひとりがユニークで、全ての人を受け入れる社会を願います。

社会的に弱い立場にある人々をも含め市民ひとりひとり、排除や摩擦、孤独や孤立から援護し、地域社会の一員として取り込み、支え合うインクルージョンという考えです。

本書では、障害児のニーズに沿った性教育やLGBTなど性に多様性を学ぶインクルーシブ教育が紹介されています。

あらゆる方にとって、必読の内容でした。

4.子育てを考えるための題材として
1歳の娘と4歳の息子の親としても、ためになる本でした。
この本を読んだことを、妻に伝え、子育ての方針を話し合いました。
妊娠や出産について、科学的に説明すること。
家庭では、小さい時から安心して話ができる環境を作っておくこと。
ノーと言えること。

性教育といっても、日常の会話で、子どもの疑問に真摯に答え、信頼関係を築くことが大切と考えています。

5.学校とは

インターネットの発達もあり、家庭でもある程度は、学ぶことができるようになりました。
それでも、本書を読み、「学校だからこそ」学べる内容があることにも気づかされました。

学校は、「すべての子どもが可能な限り自立した市民になる準備をするためにある」とリヒテルズさんは書かれています。

様々な背景を持った子ども達との交流から、違いを尊重し、対話し、人間関係を築いていく、そんなシチズンシップ教育によって、自立した市民に育っていく。

そういった意味から、公立の学校の意義を、もっと引き出していきたいと考えました。

6.地域の拠点となる学校

保健所やNGOなどと連携し、教員や保護者も含めた学校全体を健康 なライフスタイルを促進していこうという「ヘルシースクール・プログラム」が2012年から始まっています。

学校を拠点に、保健所がアドバイスをしながら、地域の様々な資源を活用し、地域に健康なライフスタイルを普及していこうというものです。

今年2月にリヒテルズさんからお聞きした「ワイドスクール」や「統合こどもセンター」という、学校や子どもに関する複合施設についてのお話です。
※学校施設は、統廃合ではなく複合化へーワイドスクール(BredeSchool)の事例を聴いて https://y-yamasita.com/%e3%81%9d%e3%81%ae%e4%bb%96/5821.php

7.「教育のまち」を実現するための指針
私は、高校教諭でした。
生徒中心の学級運営、部活動や学生寮での自立的な組織作り、協同的な学びのの授業など、充実した教育活動でした。

しかし、大きな壁にも直面していました。
学校外での生徒を取り巻く環境です。
家庭や地域、社会が与える生徒への影響は大きいものです。

経済不況で親が失業している家庭、TX新線開通や郊外大型店の進出によるまちの衰退。治安の悪化、若者をねらった犯罪、「勉強したって社会の役に立たない」と言う大人。

「何とかしなければ」
そんな気持ちで解決策を模索する中で出会ったのが、リヒテルズ直子さんが書かれた『オランダの教育』でした。

その本を読み、社会を変える教育・教育を支える社会という視点を得たことを思い出します。

あれから約10年。
学校を離れ、研究だけではなく、地域に入って声を拾い、オランダも訪問し、教育について考えてきました。

学校だけでなく、柏市全体が、「教育のまちに」なることを目指し、活動してきました。

本書は、性教育といった教育方法のみならず、社会全体で教育を支えていくこと、また、その教育が人々を幸せにしていくというビジョンが示されています。           0歳からはじまるオランダの性教育

投稿者:

山下 洋輔

千葉県議会議員(柏市選出)。 元高校教諭。理想の学校を設立したいと大学院に進学。教員経験、教育学研究や地域活動から、教育は、学校だけの課題ではなく、家庭・地域・社会と学校が支え合うべきものと考え、「教育のまち」を目指し活動。著書『地域の力を引き出す学びの方程式』 2011年から柏市議会議員を3期10年を経て、柏市長選に挑戦(43,834票)。落選後の2年間、シリコンバレーのベンチャー企業Fractaの政策企画部長として公民連携によってAIで水道管を救う仕事を経験。 柏まちなかカレッジ学長/(社)305Basketball監事。 千葉県立東葛飾高校卒業。早稲田大学教育学部卒。 早稲田大学大学院教育学研究科修士課程修了後、土浦日大高校にて高校教諭。早稲田大学教育学研究科後期博士課程単位取得後退学。 家族 妻、長男(2014年生まれ)、長女(2017年生まれ)