震災のあった2011年の夏に立ち上がった「安全•安心の柏産柏消」円卓会議の事務局長をつとめられ、現在ストリート•ブレーカーズ代表で、都市社会学者の五十嵐泰正さんのご著書『原発事故と「食」 市場•コミュニケーション•差別』(中公新書)を読んでから、もう2ヶ月以上が経ちました。
デリケートな問題をテーマとし、ネットの炎上ネタに終わるかもしれない恐怖や新たな分断の種をもたらしてしまうのではないかという懸念と闘い、上梓することに不安で胸が張り裂けそうだったと、あとがきにありました。
この7年間を振り返ると、気軽に本の感想をシェアすることすら、躊躇われます。
柏市は、放射能のホットスポットとしてマスメディアに報道され、市長の姿勢も批判されました。
私が議員になったのが、2011年9月。
震災後の選挙でした。
多くの市民が何を信じて良いか分からず、社会が分断される様を目の当たりにしました。
多くの方々の、深刻な不安と怒りなどの声をお聞きしてきました。
SNSでは、主張が過激化していく様子にも触れ、良かれと思って取り組んだことが炎上してしまった友人もいました。
議会に届く請願に対する賛成反対についても、何度も議論を繰り返しました。
私生活でも、結婚し、子どもが生まれ、育てていく中で、夫婦で常に話し合ってきました。
別居してしまった家庭も見てきました。
この7年間の判断や行動が、あれでよかったのかどうか?
一つひとつを確認しながら、読むことになりました。
本書では、流通や市場の課題、消費者とのコミュニケーション、「デマ」や風評、差別の問題などから、「食」について論じられています。
【科学的リスク判断】、【原発事故の責任追及】、【一次産業を含めた復興】、【エネルギー政策】に切り分けて、議論するべきことを徹底されています。
しかし、この原発事故後の放射能災害は、切り分けて議論されず、政治化してしまい、議論は混乱し、社会的な分断を生んでしまったことに、胸が痛みました。
マスメディアやSNSで交わされた議論を丁寧に拾いながら、マーケティングやリスクコミュニケーションについて、考察されているのは、他の分野でも生かされる内容です。
ノルウェーの事例が紹介され、一般的信頼や異質性への寛容さに注目されています。
対話の文化を育てていくことは、本書の内容からも、大切なことだと感じました。
あらためて、五十嵐泰正さんのご著書『みんなで決めた「安心」のかたち』を読み直したいと思います。