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今こそ、「一揆」の時代!−自治体と地方自治

以下、『BE-COM5月号 vol.248』 (2013.6.1 BE・COMときわ通信発行)に掲載より引用
今こそ、「一揆」の時代!−自治体と地方自治

【一揆とは、農民暴動だけではない】

決して、煽動しているわけではない。このことを、最初にお断りしておかなければならない。
一揆とは、権力に対する農民の暴動といたイメージが強いが、それは江戸時代に強調された、一つの側面に過ぎない。もともとは、より広い概念であったのだ。
一揆とは、ある目的をもって組織や集団を作ること、そして作られた集団自体のことである。たとえば、賊から自分たちを守るため、あるいは紛争や開発など共通の目的をもって、一揆という集団が結成された。今でいうNPOやプロジェクトチームみたいなものだったのだ。

【自治体のルーツ】

そして、当初の目的が達成された後も、その集団は、新たな問題や目的に備え、日常的に相互扶助を行う集団として存続していく。それが、「村」の始まりである。同じ土地に住んでいるという縁で庶民たちが一揆を結んで形成したのが、現在の基礎自体(市町村区)につながっていく。室町時代から戦国時代にかけ、荘園に代わり、つい最近に至るまでの生活の枠組である村や町が、政治や経済の単位となった。

中世の統治システムや組織運営は、一揆であった。中央集権体制ではなく、一揆という自治組織の形式をとっている。戦国大名と家臣たちも、一揆というチームだった。この戦国大名の一揆が、地域の自治組織の一揆と契約を結んでいったのだ。

この統治システムは、秀吉の時代に断ち切られるが、家康の時代に少し復活する。明治になり、断ち切られることになるが、それもまだ200年たらずの歴史なのだ。

つまり、地方自治を考えるために、一揆は大きな可能性を秘めている、と言える。そして、一揆の力を再起動させることで、自治体改革が実現し得る。

【一揆の時代背景】

元寇後あたりから武士は経済的に疲弊し、分割相続から単独相続になる。その影響で、南北朝の争乱も応仁の乱も、中央の争いがすぐに各地に広がり、そして長引いた。地方での跡継ぎ争いと中央での政争が結びついたのだ。一族の団結より、地域密着。血縁から地縁のつながりが強くなった。楠木正成など悪党は、跡継ぎにならなかった武士から発生し、時代変革の原動力となった。

室町時代は跡継ぎ争いで、政治は構造的に混乱していた。そんな中、地域で自立する民衆の動きがある。この民衆の動きを取り込んで、あるいは、封じ込めながら戦国大名は領国を統治していった。民衆の動きと政治が、相互に作用するわけである。

農業生産力の向上、そして貨幣経済の浸透。武家の跡継ぎ争いだけではなく、これらが村の自立の積極的な要素となった。戦国時代の村は、村絵図を自分たちの論理で再構成し、自分たちの歴史を紡ぎ始めた。自立したコミュニティが動き始めたのだ。

【これからは地域密着】

室町時代後期の中央政権が権力闘争に明け暮れ、力を失っていく。そこに、地域の一揆に根ざした新勢力(国人・地侍)が地域秩序を維持していった。下剋上が起こっていった。できるだけ地域に密着した人間が力を持つようになった。

この状況は、中央の政治が混乱する今日へのヒントになる。まさに、中央が混迷する今、室町時代や戦国時代のように、地域に密着するところからチャンスがあるのではと感じている。

都会から地元に戻って暮らす若者や地域コミュニティの見直しなど、今、地域が注目を集めている。ビジネスでも、消費者との直接的なつながりを求めるようになった。メディアも多様化し、地域に根付いた情報発信が重宝されるようになってきた。政治でも、地域に密着した市議会議員が面白い。社会は、フラット化してきた。

とことん地域に密着すれば、「中央」を越えて、世界の各地域に直接働きかけることが可能になった。室町時代・戦国時代とは桁違いのITや流通の発達のお陰だ。地域密着でありながら、一地域にとどまらず、他の地域と横断的につながり、連携していくことができる。

Think Globally, Act Locally(グローバルに考え、地域で実践する)。今こそ、地域に生き、一揆を起こしていく時である。

柏まちなかカレッジ  山下洋輔

投稿者:

山下 洋輔

千葉県議会議員選挙(柏市)•立憲民主党公認候補予定者。 2021年10月、柏市長選挙(2021年)に無所属で立候補。43,834票を託して頂きました。その後、AIで水道管を救うFracta Japan株式会社の政策企画部長に。 元柏市議会議員。柏まちなかカレッジ学長。元高校教諭。2児の父。 教育学研究や地域活動から、教育は、学校だけの課題ではなく、家庭・地域・社会と学校が支え合うべきものと考え、「教育のまち」を目指し活動。著書『地域の力を引き出す学びの方程式』 (社)305Basketball監事。 千葉県立東葛飾高校卒業。早稲田大学教育学部卒。 早稲田大学大学院教育学研究科修士課程修了後、土浦日大高校にて高校教諭。早稲田大学教育学研究科後期博士課程単位取得後退学。 家族 妻、長男(2014年生まれ)、長女(2017年生まれ)