フィンランドのいじめ対策プログラム KiVa program

以前にもご紹介しましたフィンランドのいじめ対策プログラムKiVaについて、あらためてまとめたいと思います。
KiVa 参考情報
読売新聞の記事 2011年11月23日

【フィンランドでKiVaが採用されるまで】
フィンランドでは、1990年代初めに、いじめに関する悲惨な事件や自殺などが相次ぎ、07年には銃乱射事件犯人の母親が幼少時代にいじめられいたなど、メディアが大きく取り上げたこともあって社会の注目を集めるようになった。
99年に学校の安全確保に関する法が制定され、03年の法改正で各学校にいじめ対策の行動計画策定が義務づけられた。だが、学校ごとにプログラムを作ると時間がかかり、効果があるかどうかもわからないので、06年に政府の依頼を受けて、いじめのメカニズムなどを研究してきたトゥルク大学のクリスティナ・サルミバリ(Christina Salmivali)教授らが中心となって「KiVa」の開発を始めた。09年から全国の小中学校で導入が始まり、現在、9割の学校で採用されている。
【いじめ対策プログラムKiVaの内容】
特徴は、いじめ加害者‐いじめ被害者という関係ではなく、学級の傍観者・何もしない児童・生徒に焦点を当てている点である。傍観者は、いじめに関係ないというのではない。学級内での人間関係など、いじめのメカニズムを明らかにする。
学級全体をチームととらえ、学級全員で良い学級を作っていこうという態度を育てる。
学校は民主主義の実践の場である。社会の不正に対し、「おかしいことは、おかしい」と言える市民になって欲しいというシチズンシップ教育が背景にあると感じた。

具体的には、いじめのメカニズムの知識を学び、いじめが学級全体の問題であるということをロールプレイングやイマジネーションゲームで疑似体験し、ディベートや対話、グループ活動を駆使して考えさせる。

年約20授業時間のプログラムである。
校長、保健委員やその他教員など3人以上からなるチームを作り、いじめが起きた学級の担任と協力して対応することになっている。

家庭向けのプログラムも用意してある。
KiVa いじめ対策プログラム保護者向けのガイド
問いかけ、いじめ被害者の家庭でのサポート、いじめに対し「やめて」と言いうための家庭での練習、周囲の仲間をいじめから被害者を救うための行動、ネットいじめ対策、親としての心得など、充実した内容である。

「もし、子どもがいじめに加わっていたら、何をすべきか?」など、具体的なものである。

【いじめ対策プログラムKiVaの効果】
「導入してから9か月後のいじめ被害の報告件数は、導入していない学校に比べて2割前後低かった。生徒の不安感、抑うつ傾向も低く、逆に学校への愛着や学業意欲は高かった。以前は『うちの学校にはいじめはない』と話す校長が多かったのが、『いじめはある。こういう対応をとっている』と報告するようになるなど、意識の改革もあった」とクリスティナ・サルミバリ教授は、読売新聞の記事で答えている。
教育新聞(2013年5月6日6面)では、「実施校では2年でいじめが4割減った」、「クラス内の問題解決に教員が自信を持てるようになり、生徒との間の信頼関係が強くなった」などの効果がみられるという。

【積極的な第三者を育てる】
このいじめ対策プログラムKiVaから、いじめ加害者・被害者ではない第三者への働きかけの研究が必要と感じた。
そういった視点で、マサチューセッツ工科大学の Active Bystanders が要チェックである。
ここでは、いじめを見て見ぬふりすることなく、スマートな方法で介入する積極的な第三者(Active Bystanders)となるための事例が紹介されている
http://web.mit.edu/bystanders/index.html

投稿者:

山下 洋輔

千葉県議会議員選挙(柏市)•立憲民主党公認候補予定者。 2021年10月、柏市長選挙(2021年)に無所属で立候補。43,834票を託して頂きました。その後、AIで水道管を救うFracta Japan株式会社の政策企画部長に。 元柏市議会議員。柏まちなかカレッジ学長。元高校教諭。2児の父。 教育学研究や地域活動から、教育は、学校だけの課題ではなく、家庭・地域・社会と学校が支え合うべきものと考え、「教育のまち」を目指し活動。著書『地域の力を引き出す学びの方程式』 (社)305Basketball監事。 千葉県立東葛飾高校卒業。早稲田大学教育学部卒。 早稲田大学大学院教育学研究科修士課程修了後、土浦日大高校にて高校教諭。早稲田大学教育学研究科後期博士課程単位取得後退学。 家族 妻、長男(2014年生まれ)、長女(2017年生まれ)