柏のまちづくりの指針-柏市第五次総合計画

総合計画とは、まちづくりの指針のことです。市の将来都市像とそれを実現するための実行するべき計画の考え方をまとめています。自治体行政の最上位計画と位置づけられてきました。

ただ、社会の移り変わりがあまりにも激しく、多様化しており、長期的な計画の必要性に疑問を投げかける意見もあります。平成23年8月施行の地方自治法の改正により、地方自治体が総合計画を策定する義務はなくなりました【地方自治法の一部を改正する法律(平成23年法律第35号)】
総合計画を作るかどうかは、それぞれの自治体の判断に任せられることになりました。

一條義治『これからの総合計画-人口減少時代での考え方・作り方』
一條義治『これからの総合計画-人口減少時代での考え方・作り方』

「そもそも総合計画は必要なのか?」という根本的な問いから考え直さなければならなくなりました。これまでの総合計画は、右肩上がりの人口(税収)増加と経済発展を前提として建てられてきたところがあります。
しかし、人口減少と少子高齢化が進行し、歳入の伸びは期待できないだけでなく、高齢者福祉や医療費の激増、人口が急激に増えた時期に建てられた学校やなどの公共施設(柏市では近隣センターも)や道路・下水道の更新への対応が求められます。

柏市第五次総合計画_人口の見通し
柏市第五次総合計画_人口の見通し 「2025年」:団塊の世代が後期高齢者に。 「2050年」:団塊ジュニアが後期高齢者に。5人に一人が後期高齢者となる。
柏市第五次総合計画_財政への影響
柏市第五次総合計画_財政への影響

だからこそ、総合計画が必要とも考えられます。
対処療法的な行政サービスではなく、予防的な行政サービスに移行するためにも、未来像を示し、そこから現状を改革するバックキャスティングの姿勢が求められます。そして、右肩上がりの時代の総合計画ではなく、持続可能な福祉サービスを提供できる経営基盤を、長期的な視点で確立していかなければなりません。

今後は地域の実情に応じて総合計画が多様化すると考えられます。
従来の体系的、網羅的で形骸化した計画ではなく、重点的に実施する施策だけを示す計画、首長の任期と連動させた計画、住民の理解・共有を優先した簡潔な内容の計画などが増えてくると予想されます。

さて、柏市では、昨年の議会(平成26年第3回定例会)で、柏市総合計画策定条例の制定が可決され、第5次総合計画が策定されることになりました。
これまで、ワールドカフェを取り入れ、市民※や職員の意見を募りました。
※ワールドカフェの参加者は北部、中央部,南部の,各地域から1,500人の方を無作為に て選び、参加の希望 の中から210名を抽選。実際の参加は1 4 2 名。
11回にわたる審議会も開かれ、将来都市像や施策の優先順位が議論されてきました。

12月に開催される次の議会(平成27年第4回定例会)で、柏市総合計画基本構想が提案され、審議されることになる予定です。
その前に、しっかりと準備しておかなければと、総合計画に関する勉強会を会派で開き、柏市当局の説明を求めました。

【柏市総合計画基本構想】
http://www.city.kashiwa.lg.jp/soshiki/020100/p021191_d/fil/siryou4.pdf

柏市第五次総合計画策定の留意点
柏市第五次総合計画策定の留意点

 大まかに、ポイントは3つあると把握しています。
①「教育・子ども」に力を入れる(優先順位・重点施策の明確化)
②計画には実効性がある(財源が担保される)
③柔軟に軌道修正できる

柏市第五次総合計画策定のコンセプト
柏市第五次総合計画策定のコンセプト

①「教育・子ども」に力を入れる(優先順位・重点施策の明確化)

7分野のうち、特に、「こども未来」は優先度が高いものと位置付けられています。
今回の総合計画策定にあたり、広く市民の声を聴く試みがみられます。しかし、こどもに重点を置くと言いながら、当事者であるこどもからの意見を聴いていないことは残念です。
イギリスなどは、当然のように、子どもの声が取りれられており、「ヒア・バイ・ライト(hear by right)」の手法も活用されています。

柏市第五次総合計画_施策体系「こども未来」
柏市第五次総合計画_施策体系「こども未来」

②計画には実効性がある(財源が担保される)

従来の総合計画が総花的で形骸化しているという指摘があり、必要なことは網羅されているが、その実効性に疑問が投げかけられていました。
柏市第五次総合計画は、優先順位を定め、重点施策を示し、財源も担保しています。
それでも、市民の方が見られたら、総花的に「あれも、これも」盛り込まれているように感じるかもしれません。

③柔軟に軌道修正できる

重点施策を実現するためには、計画の進捗管理が必要です。それを実行できる体制についても示されています。
総合計画への疑問でもありましたが、社会の変化は激しいものです。社会情勢や財政の現状を分析し、事業選択や優先順位を柔軟に軌道修正し、計画を実現できるようにしています。

そのために、重要なのは「評価」であると、私は考えています。
計画策定段階から、事業の目的を明確にしておき、評価指標を定めておく必要があります。数値で測定できるものだけではなく、「幸せ」や「社会的安定」など数値で測定できない事業についても、「○○の目的を達成するために」、「■■が、どれだけ増えたか」などの評価指標を、計画とともに提示して欲しいです。
財務的な評価だけでは測定できない社会的価値を評価してきたソーシャル・インパクト・ボンドの評価・測定法などを参考にすべきではないかと思います。
※「ソーシャル・インパクト・ボンド-新しい官民連携の社会投資スキーム」
http://goodman.livedoor.biz/archives/52061593.htmlimageimage

柏市第五次総合計画と、第四次総合計画とを比べてみましょう。
まず、第四次は15年計画に対し、第五次は10年の計画です。
次に、第四次は「基本構想」「基本計画」「実施計画」の三層構造に対し、第五次は「基本構想」「基本計画」の2層構造です。
これは、施策と事業の情報を基本計画に集約させることが狙いである。体系が簡素化され、市の方向性を市民に分かりやすく示したいという意図もあります。
一覧性、明瞭性、簡素化などは、全国的な流れであると感じます。

柏市第五次総合計画の全体像と第四次総合計画との違い
柏市第五次総合計画の全体像と第四次総合計画との違い

投稿者:

山下 洋輔

千葉県議会議員選挙(柏市)•立憲民主党公認候補予定者。 2021年10月、柏市長選挙(2021年)に無所属で立候補。43,834票を託して頂きました。その後、AIで水道管を救うFracta Japan株式会社の政策企画部長に。 元柏市議会議員。柏まちなかカレッジ学長。元高校教諭。2児の父。 教育学研究や地域活動から、教育は、学校だけの課題ではなく、家庭・地域・社会と学校が支え合うべきものと考え、「教育のまち」を目指し活動。著書『地域の力を引き出す学びの方程式』 (社)305Basketball監事。 千葉県立東葛飾高校卒業。早稲田大学教育学部卒。 早稲田大学大学院教育学研究科修士課程修了後、土浦日大高校にて高校教諭。早稲田大学教育学研究科後期博士課程単位取得後退学。 家族 妻、長男(2014年生まれ)、長女(2017年生まれ)