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『ポートランド‐世界で一番住みたい街をつくる』を読んで

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山崎満広さんの『ポートランド‐世界で一番住みたい街をつくる』(学芸出版社)を読みました。

第7章では、柏の葉のまちづくりも紹介されています。
ポートランドを訪れた時のことなど振り返りながら、柏のこれからに生かすべきことを考えることができました。
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【ポートランドについて】
ポートランドは、環境に優しい都市、自転車通勤に適した都市、外食が楽しめる都市、スケートボードの都市、出産に適した都市、独立系映画製作に適した都市など、様々な評価を得ています。
自動車と共に発展したデトロイトは不景気で市街地がスラム化。一方で、自動車交通を規制し、街を小さく保ってきたポートランドは、リーマンショック以降の不景気の影響をあまり受けませんでした。
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ポートランドは、人口約62万人、豊かな自然が近く、街を愛する人が多い。
柏のまちづくりに参考にすべき都市だと注目してきました。

【ポートランドにみる柏の可能性】
柏は都内まで、電車で30分圏内に位置する一方で、手賀沼や利根川をはじめとする豊かな自然環境を楽しむことができます。IMG_5521
柏駅前には個性的な飲食店が集まり、農業も盛んです。10305968_746055655473249_5942404862266452873_nポートランドのように、個性的なお店が柏にはあります。 image IMG_4831 一地方都市にすぎない柏ですが、都内の都市には真似できない強みを引き出していきます。

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新鮮な野菜、お菓子、工芸品など、大量生産ではなく、こだわりの品がならぶ柏神社の「手づくりての市」

地産地消のレストラン、ファーマーズ・マーケット、パン屋、おいしいワインやお酒、こだわりのカフェ、信頼できる食料品のあるスーパーやお店、大量生産よりもハンドメイド、競争よりも共生など、環境への意識が高いまちが、人を惹き付けます。
農家レストラン、柏の強みを活かした「食育」事業、体験農園、高齢者の経験や農村の暮らしを伝える場にもなる農家民泊を議会から提案してきました。オリンピック前に、エコツーリズムの観光政策も打ち出すべきです。325-1

山崎さんの書かれた『ポートランド‐世界で一番住みたい街をつくる』から、①歩きたくなるまちづくり、②コンパクトシティと都市計画、③草の根の住民組織とこれからの町内会、④都市再生と経済開発の実行機関、⑤ビジネス支援の仕組みといった柏市政にも生かしていくべき5つのことを学びました。

【①歩きたくなるまちづくり】
柏駅前通りでは、歩行者優先のまちづくりが進められようとしています。ポートランドから学べるところは多いはずです。

ポートランドは、公共交通が整い、カーシェアも盛んです。新型路面電車やバスが縦横に走っています。

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自転車に乗る人が多い。
500kmに及ぶ自転車専用レーンが整備され、オフィスには駐輪所はもちろんロッカー―ルームも設置されているなど、自転車環境が整っている。1136電車やバスに自転車を積むことができる。
1041まちを歩いていたら楽しいことに出会える。
自由で創造的な気質が至る所に見られる。
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「First Thursday」
毎月第一木曜日に開催されるアートの祭典。ワインやビールを片手に、アーティストとの対話を楽しむ。地元だけでなく、州外や国外からのアーティストも集まっているという。
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警官が馬にに乗っていました   。
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地区全体の調和がとれるよう景観デザインのガイドラインが設けられている。
1階の店先はガラス張りにし、夏は窓を開けて歩道と一体となる。歩道を広くとり、駐輪スペースも確保するなど、賑わいを呼ぶ通りのデザインを定めている。
891新旧の建物の混在をコントロールしている。
古い味わいを大切にしながら、リノベーションがうまく行われている。
新しい建物は既存のものとの違和感なく混在させるわけだが、「古いデザインに合わせてしまうとテーマパークのようになってしまう」という話には納得しました。
904手前が古い建物で、後ろが新しく建てられた建物。
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昼夜間人口の差をなくす建物のミクストユースも考えられています。

建物の中に、店舗、オフィス、住宅を混在させることで、昼夜間人口の差をなくし、いつでも賑わいがある街をつくる。治安の面でも効果がある。
ドーナツ化現象でダウンタウンい人がいなくなった60年代に生まれたアイデアとのこと。
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【②コンパクトシティと都市計画】
1970年代に、国の高速道路事業を廃止し、公園をつくった。そして建設予定だった高速道路の大部分も中断された。

全米中が、自動車社会の波に乗って高速道路をつくり、駐車場を増やしていた時代に、オレゴン州は土地利用計画が策定され、1979年に「都市成長境界線(Urban Growth Boundary UGB)」が設けられ、土地利用が定められ、メトロ政府によって管轄された。

都市開発や住宅開発を抑制するためと考えられがちだが、本来は、農地と自然を守るためのもの。ポートランドでは、産地からテーブルに新鮮な野菜が届く「Farm to  Table」のレストランが多い。

上下水道や電気など公共インフラの整備も効率的に維持管理できる。
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【③草の根の住民組織とこれからの町内会】
住民自治や分権について考えさせられました。

ポートランド市では、ネイバーフッド・アソシエーションという近隣活動組織があります。
防犯、防災、緑化、環境保全、ゴミ、清掃、コミュニティ形成など、日本の町会のような役割とともに、地域の土地利用計画の策定や市の予算編成への三かも任されています。
市からの予算も年額3000~5000ドルがあてられています。
市民参加といっても、住民の意思だけではなく、制度の整備も必要です。
柏市での町会や小学校区単位くらい(柏市でのふるさと協議会)に、予算や権限を増やすことについても研究したいと思います。

柏市の町会では、防犯、防災、緑化、環境保全、ゴミ、清掃、福祉の見守り支え合い、祭りなどイベント、コミュニティ形成などの役割を担い、ふるさと協議会では地域包括支援センターやファミリーサポートなどの役割を担っています。

たとえば、公園•緑地の整備•維持管理、道路•上下水道の維持管理、景観形成、土地利用や住宅開発などの地域計画、交通計画、歴史建造物の保存、低所得者向け住宅の運営、子ども食堂など居場所作り、発電やエネルギー、広告、ゴミ回収など、市役所が担っている機能を地域に任せられないだろうか。そんなことを考えるきっかけとなりました。

【④都市再生と経済開発の実行機関】
都市再生と経済開発を担う「ポートランド市開発局(Portland Development Commision’ PDC)」や都市圏全体の公共交通を運営する特別公共団体「トライメット(TriMet)の役割も参考になりました。

「ポートランド市開発局(Portland Development Commision’ PDC)」は、柏市でいうならば、まちづくり公社や商工会議所などが、その役割を担っています。
もし、PDCのような役割を果たすことができれば、まちを大きく変えることができるのではと、可能性を感じています。
さらに、エリアマネジメント組織や商店街や地権者の参加の仕方も勉強になりました。
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制度や仕組みとして、固定資産税の増収額を担保とした資金調達であるTIF(Tax Incremet Financing’)、特定地区の資産所有者からの資金調達であるBID(Business Improvement District)や開発エリアの資産所有者からの資金調達であるLID(Local Improvement District)なども紹介されています。

これまでの東葛六市の協議会の実行力を高め、広域連携のメトロ政府のような組織で、交通、ゴミ、教育、医療・福祉、公共施設の管理、経済政策、エネルギーなどの事業を進めていくべきだと思います。

【⑤ビジネス支援の仕組み】
PDCでは、地元企業の事業拡張、オフィス提供や銀行で融資してもらえない差額の支援などの起業支援、コミュニティベースの投資会社への投資、景観に配慮した店構えの改修支援、企業誘致を行っている。

企業誘致には、GPI(Greater Portland Inc.)というポートランド都市圏のマーケティングを担うNPOが主導している。

最後の第7章では、ポートランドのまちづくりの仕組みを輸出する事業について書かれています。
「行政が営業する時代」という言葉を肝に銘じなければと思います。

【私とポートランド】
2011年4月13日、柏商工会議所にて、「GREEN Neighborhood 米国ポートランドにみる環境先進都市のつくりかたとつかいかた」の著者である吹田良平さんのお話を聴きました。
ポートランドのまちづくりの事例は、今までの経済発展一辺倒ではない、新たなまちづくりの方向を示していると感じました。

GREEN Neighborhood 米国ポートランドにみる環境先進都市のつくりかたとつかいかた(繊研新聞者)
GREEN Neighborhood 米国ポートランドにみる環境先進都市のつくりかたとつかいかた(繊研新聞者)

その2年後、吹田良平さんから「GREEN URBAN INNOVATION ポートランドに学ぶグリーンシティのつくり方とつかい方」のお誘いを頂きました。
山崎さんの本を拝見し、このイベントがポートランドのまちづくりを輸出する最初のプロジェクトだったことを知りました。

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午前中は3会場に分かれた、いわゆる分科会。
グラスルーツギャザリングという形で、ポートランドの草の根の住民参加のようなスタイルで開かれました。全国の草の根の学びの場が丸の内に集結して、ポートランドのまちづくりを学び合おうという吹田さんのご趣旨をお聞きし、喜んで参加させて頂きました。

ここで神戸モトマチ大学の村上豪英さんとも出会うことができました。
その後、全国のコミュニティカレッジの経験を共有していこうという「コミュニティカレッジ・バックステージ」を開催することになります。このグラスルーツギャザリングが始まりでした。

imageその第1会場「スプロールよりネイバーフッド」を柏まちなかカレッジが担当することになりました。
イベントや文化的な雰囲気だけではなく、広域行政であるメトロ政府の役割も参考になります。コンパクトシティ、都市のシュリンクのさせ方など学びたい点満載です。

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オレゴン州メトロ政府 プレジデントのトム・ヒューズ氏と。 高校の歴史教諭だったというお話でも、意気投合しました。

このイベントの翌々日が結婚式で、夏の新婚旅行にはポートランドを訪れました。
トム・ヒューズ氏とも再会し、メトロ政府にてお話を聴かせていただきました。

1001このポートランド訪問でお世話になったのが、この本の著者でもある山崎満広さん。
おかげさまで、ポートランドのまちづくりに関して、現地を歩き、人にお会いし、体系的な説明をお聴きし、しっかりと学ぶことができました。
茨城県出身とお聞きし、私は土浦の高校で勤めていたこともあり、いっそう親しみを感じました。

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ポートランド、ワシントンDC、中国でも環境都市づくりを手掛ける建築会社ZGF Architectsの渡辺義之氏。

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この秋には、柏の葉スマートシティ構想に、ポートランドのまちづくりを取り入れられることになり、年始には住民や関係者とのワークショップが開催されました。
これらをもとに、柏の葉のまちづくりの基本構想がまとめられ、柏の葉のビジョンが発信されました。IMG_6026

2014年春には、POP UP Portlandというポートランドのメイカーを集めた展示会が日本各地で行われました。
クラフト系などと呼ばれる小規模なものづくりのメイカーがポートランドに増え、注目されていて、この分野を伸ばしていくために行政として支援する取り組みでもあるとのこと。10171291_871283202887752_6618798381933531735_n

トム・ヒューズ氏にインタビューへのインタビューやメトロ政府の予算・決算の分析など、あらためてポートランドのことを調べたいと思います。
そして、再び訪問したいですエースホテル

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投稿者:

山下 洋輔

柏市議会議員。柏まちなかカレッジ学長。教育コンサルタント。元高校教諭。 教育学研究や地域活動から、教育は、学校だけの課題ではなく、家庭・地域・社会と学校が支え合うべきものと考え、「教育のまち」を目指し活動。 著書『地域の力を引き出す学びの方程式』 教育共創研究所 代表 千葉県立東葛飾高校卒業。早稲田大学教育学部卒。 早稲田大学大学院教育学研究科修士課程修了後、土浦日大高校にて高校教諭。 早稲田大学教育学研究科後期博士課程単位取得後退学。 教育コンサルタント山下洋輔事務所設立。 2011年9月から柏市議会議員。 家族 妻、長男(2014年生まれ)、長女(2017年生まれ)